仕事の成果にモチベーションが大きく関わることは、万人が知っていることだと思います。誰だって、モチベーションがMAXの状態で仕事をしたいもの。
ただし、ネガティブな出来事が起きたり、マンネリ化したりすると、モチベーションは下がりがちになります。そのときに何の手も打たないと、生産性は下がり続け、成果に悪影響を及ぼすだけでなく、仕事に対する満足度も下がっていきます。
一方、周囲を見ると、常に高いモチベーションを保ちながらバリバリ成果を出している、「モチベーション・モンスター」のような人がいると思います。そんな人は、間違いなくいろいろな工夫をして、モチベーションの維持、向上を図っています。
そこで以下に、モチベーションを高め、維持するための効果的なアプローチ方法をご紹介します。
これらを実践することで、あなたも周囲が羨むようなモチベーションマネジメントの達人になっていけるはずです。
モチベーションを高め、維持する3つのアプローチ
モチベーションを高め維持するためには、やみくもに気合を入れようとするのでなく、人間の本能や性質を理解した上で、戦略的にアプローチする方法が有効です。
アプローチには大きく3つあります。
1.「快を求める欲求」を利用したアプローチ
行動を起こした先に「良いことや心地よいことがある」といった「未来の快」を想像すると、人は頑張ることができます。
これは脳が「報酬への期待」をすることでドーパミン、いわゆる「やる気物質」が分泌されるからです。
つまり、意図的に自分に何らかの「報酬を与える」ことを設定することで、モチベーションの向上・維持が可能になります。
ここで言う「報酬」とは有形のものだけとは限りません。「達成感や爽快感」という無形のものも含めると、より幅広いアプローチが可能になります。
この「快を求める」性質を利用した具体的な例が以下のようなものです。
ご褒美を用意する
「このタスクが終わったら、スターバックスのフラペチーノを飲む」という小さなものから、「今取り組んでいるプロジェクトが終わったら、旅行に行く」といったものまで、ご褒美を餌にして、自分を頑張る気にさせる方法です。
「快を求める」アプローチの最も直接的なものと言えます。
このことに関連する、ペンシルベニア大学による実験結果があります。
定期的にご褒美を「確認する」だけで、「確認しない」人達よりも20%も多く目標達成のための行動を取るそうです。
ここから言えることは、ただご褒美を用意するだけでなく、そのご褒美を何度も思い出しながら頑張ると、より効果的だということです。
小さい目標を立てる
何かのタスクを遂行する際に、取るべき行動プロセスを細かく分解することで、達成目標を小さくし、それによってやる気を起こさせる方法です。
これは「人は目標達成が近いとやる気になる」という性質を活用したものです。
今ひとつモチベーションが上がらないときは、大きなタスク遂行、いわばビッグステップを踏む気になりません。
そんなときこそ、ステップを細かく分解します。その上で、「まずはステップ1をクリアしよう」とハードルを大きく下げると、タスクを始める気になります。
作業を始めて2-3分経つと、少しやる気が高まっていきます。これは「作業興奮」と言って、何か行動を始めると脳内にドーパミンが出て、だんだんやる気になる作用が働いたためです。
そうやって勢いがつけば、そのままセカンドステップ、サードステップに移って、どんどん作業を進めていきましょう。
例えば、「X社への提案書を作成する」というタスクを遂行するとします。
提案書作成は、なかなかのビッグタスクです。そこで、以下のようにタスクを分解します。
- X社とのミーティングの際に重要事項をメモしたノートを見返す
- ノートの中から重要ポイントを抜き出す
- 提案書の流れ、骨子をざっくり考える
- 骨子を上司に話し、アドバイスを受け、それを反映する
- 似たような提案書が過去にないかを探す(自分、他者)
- 書き出した骨子に肉付けする
パワーポイント資料の「ページタイトル」だけ書く(上記「骨子」を反映する) - 各ページに入れたい重要なキーワードを幾つか書く
- イントロパートだけ、パワーポイント資料の中身を作成する
- ボディ(本論)パートだけ、パワーポイント資料の中身を作成する
- エンディングパートだけ、パワーポイント資料の中身を作成する
- 各ページの図解や体裁を整える
- 誤字脱字をチェックする
このように細かめに分解した上で、「① X社とのミーティングの際に重要事項をメモしたノートを見返す」だけを行うと決めます。
そうやって始めると上記の作業興奮が起こり、次ステップ、さらにその次のステップに進んでいけるでしょう。
この「スモールステップに分解」する方法は、別の効果ももたらすのでお勧めです。
それは、「そのタスクにかかる時間の見積もりがしやすくなる」というもの。
上記の例で言えば、「①に5分、②に10分、③に15分・・・」といったふうに時間の見立てがしやすくなり、それを合算することでトータルのかかる時間を予測しやすくなります。
すると、他のタスクと調整しながらも、このタスクをどのようなスケジュール感で仕上げていけばいいかの計画化もしやすくなり、仕事全体の遂行がスムーズになっていきます。
今やっていることは「誰のため、何のため」にやっているかを考える
行動が習慣化されてしまうと、人は往々にして目的を忘れてしまいがち。
その仕事を行う目的や意義を見失うと、人はマンネリ化を感じ、モチベーションは下がっていきます。
そんなときは、以下のような観点で「Why(なぜこの仕事を)?」を再考し、書き出すことをお勧めします。
「この仕事は、誰(何)の役に立つことなのか?」
「ひいては、社会のどういうことに役立つのに繋がるのか?」
「この取り組みを通じて、自分自身にどんなやりがいや成長をもたらすのか?」
などの根本の意義に立ち返って、考えてみましょう。
そうすることで、初心に戻ることができ、それが仕事に立ち向かうエネルギーになります。
仕事にマンネリ感を感じたり、初心を忘れているなと思ったら、「誰のため?」「何のため?」と自分に問いかけることで、モチベーション向上を図りましょう。
2.「痛みを避ける欲求」を利用したアプローチ
人はそもそも「恥ずかしい」、「悔しい」、「がっかりする」といった精神的な痛みを感じるような悪い状況を少しでも避けようとします。
これを損失回避性と言います。
この心理作用を利用して「もし、○○をしなかったら、××といった悪い状況になる」という設定を作ることで、行動する気を起こすアプローチ方法です。
先ほどの「快」を利用することがポジティブな側面からのアプローチだとすれば、こちらはネガティブな側面からのアプローチといえます。
この「痛みを避ける」性質を利用した具体的な例が、以下のようなものです。
やらなかった事での悪い結果をイメージする
「今これをやらなかったら顧客からクレームが来て、信用がガタ落ちするかも」
「今期中に行わなければ、ボーナスに響くだけでなく、昇給昇格に悪影響を及ぼすかも」
等、「やらなかったら、こういう大きなダメージがある」とありありと想像することです。
人の潜在脳は、「想像したこと」と「現実」の区別がつかないと言われています。
つまり、ありありと想像しただけで現実に起こったことと脳が錯覚し、悪い結果に至らないようにモチベーションが湧き、ひいては行動化の促進につながるというわけです。
自分にペナルティを課す
「○○時までに終えられなかったら、同僚にコーヒーをおごる」
「週末までに完了しなかったら、楽しみにしているDVD視聴を我慢する」
など、やらないことによる罰則を自ら課すことで、やはりモチベーションの向上と行動化の後押しを図る方法です。
上記の「悪い結果のイメージ」と違う点は、自ら悪い結果を作り、自分と約束するところです。
1つめの「快のアプローチ」の「ご褒美を用意する」の逆バージョンと捉えていいでしょう。
他人の目を利用する
「周囲の人達に、やるべき行動や期限を宣言する」
「ある同僚と時間を決めて、一緒にタスクに取り組む」
など、他人の目をチェック機能として活用して、やる気と行動化の後押しをする方法です。
人は社会的動物なので、「自分との約束」より「他人との約束」を優先しがちです。そうしないと、他人に迷惑をかけたり、人間関係がスムーズに行かなくなったりするリスクがあるからです。
ここでは、その性質を逆手に取り、「他人を巻き込んだんだから、やらないのは信用を落とすことになる」と自分自身に思わせ、行動する気にさせているわけです。
そもそも人は、「快を求める」より「痛みを避ける」方のモチベーションが2〜4倍大きいと言われます。これは行動経済学等の研究で実証されています。
つまり、これらの「痛みを避ける欲求」を利用したアプローチの方が効果的であると言えるのですが、あまり続けすぎると幸福度や満足度が下がることになりかねません。
ここぞという時や、何が何でもやらなければならないという時に限定して使用する方が無難でしょう。
3.人間の「楽しい」を利用したアプローチ
ここまで、自分の『重い腰』を上げるために「快」と「痛み」の2側面からアプローチする方法をお伝えしてきました。
もう1つのアプローチが、人間が感じる「楽しい」という感情にダイレクトに訴求するものです。言わば、「楽しさスパイスを加えることで、『重い腰』ですらなくす」という方法とも言えます。
前述の1つめ「快」のアプローチが「将来」の快を想像するのに対して、この手法は「今」の楽しさにフォーカスします。
例えば
Todoリストに書かれたタスクを遂行したら、「ゲーム感覚」で消し込んでいく
タイマーを使い、5分で出来るとこまで挑戦してみる
お気に入りのカフェで仕事をする
等々です。
「楽しさ」を感じるスイッチは人によって異なります。また、楽しいかどうかは意外とやってみないと分からないものです。
従って、まずはいろいろと試しながら、自分のスイッチが入りやすいパターンを見つけていくと、効果的でしょう。
あなたにとって最強のモチベーションを維持方法を見つけてみましょう
ここまで「モチベーションを高め、維持するアプローチ方法」を3つ紹介してきました。
モチベーションを高め、維持することが決して難しいことではないとお感じいただけたのではないでしょうか?
この記事を参考にして、あなたにとって効果的な方法を見つけて、いろいろと試してみてください。その上で、あなたなりの無敵のモチベーションマネジメント術を編み出していただければと思います。
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西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。