ロールプレイを行うときのポイント
前回のコラムで考え方ややり方さえ適切であれば、ロールプレイほどビジネスマンのコミュニケーション・スキルを伸ばすために効果的な方法はないというお話をしました。
そしてポイントは、ロールプレイの主役を「営業マン役」ではなく、「オブザーバー」に据えることにあるという私の考えを述べさせていただきました。
するとありがたいことに、何人かの方から「目から鱗が落ちるような話だった」という声をいただいたのですね。
そこで今回も引き続き、商談スキルやプレゼンスキルを高めるためのトレーニングの手段として、社内でロールプレイを行うときのコツについて紹介したいと思います。
今回のテーマは、「ロールプレイの成果は、事前の準備で決まる!」です。
いくらオブザーバーを主役に設定したとしても、準備が疎かでは成果は期待できませんからね。
事前準備1:顧客役の準備
さて、ロールプレイがうまくいかない理由はおおきく二つあります。
一つは顧客役の問題。
商談のロールプレイでは、営業マン役と顧客役に分かれて、あたかも実際に商談をやっているかのように二人に演じてもらうことになります。
ところが顧客役の演技が現実性を欠いていると(言動が矛盾していたり、キャラクター設定が不十分だったりすると)、ロールプレイ自体が実践に役立たないものになってしまいます。
そこで大切になるのは、事前に数分程度のイメージングタイムを設けて、顧客役になる人に、
例えば仮に自動車の販売会社という設定でロールプレイをするとすれば、顧客役の人は
・現在持っている車は○○○で、××年乗っている。
・今の車の不満は、△△△。
・趣味は□□□で、休暇は◆◆◆をして、過ごすことが多い
・車は、もっぱら■■■に使うことが多い
・最終的には、妻が決定権を握っている
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といったレベルにまで状況設定やキャラクター設定をさせるわけです。
もちろん、これは自分の心の中だけでイメージしておくもので、ロールプレイが始まるまで相手には伝えません。
ロープレイが始まると、営業マン役の質問にたいして顧客役は、
・はじめは、あまり喜んで返答しない
・聞かれた以上のことは話さない
・相手の良い質問にたいして、徐々に心を開いていく
といったようなことをルール化します。
ここまで具体的な設定をすることで、より現実の商談場面に近いリアリティーのあるロールプレイが可能になるわけです。
事前準備2:オブザーブ役の準備
ロールプレイがうまくいかないもう一つの理由は、
営業マン役と顧客役のやりとりを評価するオブザーバーのフィードバックが大雑把すぎるというものです。
「なかなかうまかったですね」とか「70点ぐらいでした」といった雑ぱくなコメントでは、評価する側にとっても評価される側も学びの少ないロールプレイになってしまいます。
この点については、オブザーバーにたいして、
・ロールプレイの主役は、営業マン役ではなくオブザーバーであるという意識を徹底させること
・雑ぱくなコメントはNGであり、より具体的なフィードバックをさせること
が大切であることは、前回お話ししたとおりです。
しかし「より具体的なフィードバックをしてください」と求めたとしても、オブザーバーの人は、何をどう具体的にフィードバックすればいいのかとまどってしまうかもしれません。
そこでオブザーバーには、
チェックシートには
・相手が答えやすい質問ができているか
・話すことと聞くことの割合は適切か
・事例を使って説明できているか
・確認質問をしているか
・「なぜ質問」「たとえば質問」ができているか
・相槌やうなずきはできているか
といった評価の観点を記しておき、それらのチェック項目をもとに 観察、分析してもらいます。
そして当然ながらこれらの項目は、研修の中で学んだスキルに沿ったものにしておきます。
こうしておけばオブザーバーは、学んだ項目をフィルターにかけながら、ロールプレイを評価できるようになるわけです。
オブザーバーにとっては、より具体的なフィードバックができるだけではなく、気づきの多い場にもなります。
ロールプレイを行う際に、ここまで綿密な仕込みをするのは、はっきり言って企画者側には大きな負担がかかります。
しかしその負担に見合う大きなリターンが確実にあるはずです。
「たかがロールプレイ、されどロールプレイ」です。みなさんの会社でも、ロールプレイの見直しと充実を図ってみられてはいかがでしょうか。