いきなりですが、「叱る」に関する、アンガーマネジメント協会による調査データをご紹介したいと思います。

・上司は叱ったあと、62%が数分で気持ちを切り替えられる
・叱られた部下は、20%が1年以上も(!)ネガティブ感情を引きずっている
・離職者のうち、57%が上司の叱り方次第で「離職を防げた」

と回答

どうでしょう?特に上司やリーダーの立場にある人には、ショッキングな数字だったかもしれません。叱る際には非常に慎重になった方がいいと言えるでしょう。

「叱らない」は正解ではない

そう考えると、いっそ部下を叱ったり、注意したりしないほうがいいのでしょうか?

私はそうではないと思います。なぜなら、耳の痛いことを言われることで、大きな気づきや成長に繋がり、上司の愛情を感じることもよくあるからです。

あなたも「今の自分があるのは、あの厳しい一言のおかげ」という経験があるのではないでしょうか?

ポイントは、「注意するか、しないか?」ではなく、「うまく注意するかどうか?」なのです。

「叱る・注意する」というのは、言わばちょっとした劇薬です。つまり、使い方1つで大きなプラスにもマイナスにも転ぶというわけです。

では、うまく注意するにはどうすればいいのでしょうか?もちろん、テクニックはいくらでもあります。

しかし、もっと大事な前提があります。

それがタイトルにある「部下を叱る・注意するときこそ、重要プレゼンだと思え」ということです。

ここまで話したように、叱り方一つで大きなプラスにもマイナスにも転びます。つまり、結果にダイレクトに繋がる行動なのです。

これをプレゼンテーションと言わずして、何をプレゼンと言うのでしょうか?

重要プレゼンとして準備する

では質問です。

あなたはそもそも重要な、ここ一番のプレゼンをどのように行いますか?

その場の思い付きで、感情の赴くままには行わないはずです。しっかり準備をして、プレゼン本番では最大限の誠意と熱意が相手に届く
ように、全力で行うのではないでしょうか?

部下に注意する時も、それと同じように行いましょう。

ちなみに私は、メンバーに注意する前に話すポイントのメモを作ります。

例えば、

「どんな前振りをして話し始めようか?」
「どんな順番で話すといいか?」
「どんな具体例を挙げながら伝えると、より納得してもらえるか?」

といった観点で内容を洗い出し、整理した上でシナリオに落とし込みます。場合によっては、トークのシミュレーションをすることもあります。

その上で、部下に伝える際は細心の注意を払いつつ、気を入れて全身を使ってプレゼンします。

その際の注意点としては、営業プレゼンと同じように相手の言い分も聞きながら、双方向のコミュニケーションを行うこと。そうすることで、より納得や腹落ちをしてもらいやすくなるからです。

さらに、「注意する」プレゼンが終わった後は、自己反省会を行うことで改善点を探し、次なる機会に生かすようにします。

上記のようなプロセスで、入念に「叱る・注意する」ようにすれば、頭で示したような「部下がネガティブ感情を引きずり、離職に至る」ことは避けられるはず。

そう考えると、「叱る・注意する」ことに対して何も恐れる必要はありません。

「叱る・注意する」というのは、上司として大切な役目です。

しかし、その方法次第で、部下の心に深くポジティブな影響を与えることも、逆に傷つけることもできるのです。

だからこそ、叱る場面を単なる指摘の時間にせず「重要プレゼン」として、誠意をもって向き合って欲しいと願います。

それが、部下の成果と成長を促す最大のチャンスになるのです。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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