いきなりですが、「叱る」に関する、アンガーマネジメント協会による調査データをご紹介したいと思います。
・叱られた部下は、20%が1年以上も(!)ネガティブ感情を引きずっている
・離職者のうち、57%が上司の叱り方次第で「離職を防げた」
と回答
どうでしょう?特に上司やリーダーの立場にある人には、ショッキングな数字だったかもしれません。叱る際には非常に慎重になった方がいいと言えるでしょう。
「叱らない」は正解ではない
そう考えると、いっそ部下を叱ったり、注意したりしないほうがいいのでしょうか?
私はそうではないと思います。なぜなら、耳の痛いことを言われることで、大きな気づきや成長に繋がり、上司の愛情を感じることもよくあるからです。
あなたも「今の自分があるのは、あの厳しい一言のおかげ」という経験があるのではないでしょうか?
ポイントは、「注意するか、しないか?」ではなく、「うまく注意するかどうか?」なのです。
「叱る・注意する」というのは、言わばちょっとした劇薬です。つまり、使い方1つで大きなプラスにもマイナスにも転ぶというわけです。
では、うまく注意するにはどうすればいいのでしょうか?もちろん、テクニックはいくらでもあります。
しかし、もっと大事な前提があります。
それがタイトルにある「部下を叱る・注意するときこそ、重要プレゼンだと思え」ということです。
ここまで話したように、叱り方一つで大きなプラスにもマイナスにも転びます。つまり、結果にダイレクトに繋がる行動なのです。
これをプレゼンテーションと言わずして、何をプレゼンと言うのでしょうか?
重要プレゼンとして準備する
では質問です。
あなたはそもそも重要な、ここ一番のプレゼンをどのように行いますか?
その場の思い付きで、感情の赴くままには行わないはずです。しっかり準備をして、プレゼン本番では最大限の誠意と熱意が相手に届く
ように、全力で行うのではないでしょうか?
部下に注意する時も、それと同じように行いましょう。
ちなみに私は、メンバーに注意する前に話すポイントのメモを作ります。
例えば、
「どんな順番で話すといいか?」
「どんな具体例を挙げながら伝えると、より納得してもらえるか?」
といった観点で内容を洗い出し、整理した上でシナリオに落とし込みます。場合によっては、トークのシミュレーションをすることもあります。
その上で、部下に伝える際は細心の注意を払いつつ、気を入れて全身を使ってプレゼンします。
その際の注意点としては、営業プレゼンと同じように相手の言い分も聞きながら、双方向のコミュニケーションを行うこと。そうすることで、より納得や腹落ちをしてもらいやすくなるからです。
さらに、「注意する」プレゼンが終わった後は、自己反省会を行うことで改善点を探し、次なる機会に生かすようにします。
上記のようなプロセスで、入念に「叱る・注意する」ようにすれば、頭で示したような「部下がネガティブ感情を引きずり、離職に至る」ことは避けられるはず。
そう考えると、「叱る・注意する」ことに対して何も恐れる必要はありません。
「叱る・注意する」というのは、上司として大切な役目です。
しかし、その方法次第で、部下の心に深くポジティブな影響を与えることも、逆に傷つけることもできるのです。
だからこそ、叱る場面を単なる指摘の時間にせず「重要プレゼン」として、誠意をもって向き合って欲しいと願います。
それが、部下の成果と成長を促す最大のチャンスになるのです。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。