マネジメントで『1on1ミーティング』が役立つ
大手一流企業も積極的に導入・実践している『1on1ミーティング』は、社員の成長と組織の生産性向上を果たす手段の一つとして、広く認知されています。
とある企業では、2週間に1回行ったところ、従業員の半数以上が「仕事の成果が向上した」と回答したほど。
コミュニケーション不足に陥りがちな現代の組織の中で、上司と部下の関係性をより強固にし、社員の能力を引き出すことは、企業繁栄に必要不可欠。その大きな一助となるのが、「1on1ミーティング」なのです。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、「上司と部下が定期的に1対1で行うミーティング」のことです。
月1回や隔週1回などのペースで行い、今抱えている悩みや業務に対する希望、直面している問題などを部下に率直に話してもらいます。
ポイントは『部下が主役になる』という点。あくまで上司は部下の思いを引き出し、傾聴・共感しながら自己解決をサポートしていかなければなりません。
1on1ミーティングの目的と意味
定期的な1on1ミーティングには、部下の主体性を育むことに加え、互いの信頼関係の強化という目的もあります。
これまでよりも密なコミュニケーションやコーチングを徹底することで、業務の質やスピードも格段にUPすることでしょう。
また、部下のモチベーション向上も図れることから、より仕事にやりがいを感じるようになり、会社への愛着も強くなっていくはず。それがゆくゆくは優秀な人材の離職防止にもつながります。
つまり、1on1 ミーティングは、部下の未来のためであり、チームの未来のためのミーティングなのです。
1on1ミーティングをするときのポイント
話しやすい雰囲気作り
1on1ミーティングを行う理由は、部下が抱える問題やモチベーションの確認、自走のサポートにあります。
とは言うものの、堅苦しい雰囲気のまま「何でもいいから話してよ」と上司に促されても、部下は急に心を開いて、本音で話せるものではありません。
まずは、話しやすい雰囲気作りを心がけましょう。
「言葉が強すぎないか?」
「部下の発言にちゃんとリアクションしているか?」
など、自問自答しつつ、自分の態度を振り返ります。
柔らかい空気を生み出すことが、会話を促進させる第一歩になります。
テーマを絞る
短時間で効果的なミーティングにするには、テーマを絞ることが重要です。1回のミーティングで1テーマがいいでしょう。
短時間で効率的に問題解決しようとして、いくつものテーマを取り上げると、どれも中途半端な対話になり、結局は中身の薄いものになってしまいます。
例えば、「今の業務における悩み」、「仕事へのモチベーション」、「今後のキャリア」などから一つを主題とし、じっくり腰を据えて、話を聞き出しましょう。
狭く、深く聞くことによって、普段の仕事中にはたどり着けないような、秘めた思いまで丁寧に引き出すことが可能になります。
話しすぎないようにする
上司は多くの場合、部下よりも経験豊富で、様々な困難も乗り越えてきていることでしょう。そのため、部下の悩みを聞くとすぐに解決策が見え、いつのまにか話し過ぎてしまう傾向があります。
ただし、大事なことを決して忘れないように。1on1ミーティングの主役は「部下」であり、上司は「聞き役」です。
部下自身に話の主導権を持たせ、それに対し上司は共感を示し、ねぎらいの言葉を投げかけることが大切。部下自身の頭と心の整理をサポートする役割に徹しましょう。
1on1ミーティングで話す12の具体的テーマ
ここでは、1on1ミーティングで話すべき12のテーマを紹介します。
テーマは大きく分けて「業務」、「個人」、「組織」の3つがベースになっています。
次のマトリクスをご覧ください。
このマトリクスには、「業務」、「個人」、「組織」それぞれの項目における過去、現在、未来のテーマが12個記載されています。
過去の学びや、現在抱えている人間関係の悩み、そして未来のキャリアビジョンなど、幅広いジャンルからテーマを選ぶことで、充実した1on1ミーティングが実現できます。何を話せばいいのかわからない、話が続くのか心配…という方は、下記の12テーマを参考にして、話す題材を見つけてください。
業務に関するテーマ
1.過去の体験からの学び
これまでの仕事で身についたスキル、経験してよかったエピソード、成長の実感や得た自信などを話してもらいます。
2.現在の課題
今、抱えている仕事の悩みやストレスになっていること、気になっていること等を自由に話してもらいます。
「些細なことや、なんとなく心に引っかかっていることなど、何でもいいよ」と言ってあげると相手はより話しやすいでしょう。
3.これからの業務改善
自分のタスクや関わっているプロジェクト等において、「こういう方向で改善すると、もっと良いと思う」といった、本人の思いや意見を率直に話してもらいます。
4. 今後チャレンジしたいこと
「これからの仕事でトライしてみたいことは?」等、小さな目標から壮大なチャレンジまで、自由に話してもらいます。
個人に関するテーマ
5. 過去の体験からの学び
最近読んだ本や見た映画等からの気づき、また、受講した研修やセミナーで学んだこと等を話してもらいます。「他者から聞いたことも含め、趣味や日常の体験で感じたこと等、何でもいいよ」と言ってあげると、相手の話すハードルが下がっていいでしょう。
6.現在の能力開発
「現状、高めていきたいと思っている能力は?」、「最近、成長したと自分で思う点は?」など、今の能力を自己分析した結果、浮かび上がった課題や強化の方向性などを話してもらいます。
7.現在の身体、心の調子
最近の健康状態や心身の不安、モチベーションなども大事なテーマの一つ。
早期発見と対処が、仕事上の課題解決につながる可能性もあります。
8.現在のパーソナルライフ
「家族やプライベート上の悩み、気になっていること」などを話してもらいます。人によっては、あまり話したがらないテーマであるため、決して無理強いはしないように。軽く振ってみて、相手が話したがっているようなら、少しずつ聞き出していきましょう。
9.キャリアビジョン
「思い描いている、将来の理想のキャリアとは?」、「そこに辿り着くためのに何が必要か?」等、やや長期的な未来像やそこに至るまでのステップを話してもらいます。
組織に関するテーマ
10.現在の人間関係
「社内の人間関係での不安や気になっている点」等を聞きます。ただし、「聞いたことは許可なく絶対に口外しない」ことを約束した上で行いましょう。
11.未来の方針についての意見
「チームとして示している方針」に対して、いちメンバーとして、どう感じているかを率直に語ってもらい、今後の方針の参考にします。
12.今後の職場改善
「よりよい職場、組織になるためにどんな改善をしたらいいか?」等の観点で、率直な意見を聞き出します。
話すこと以上に重要なこと
多くのマネジャーは「1on1 ミーティング」と聞くと、「何を話そうか?」となりがちですが、実は「話すこと」よりも、もっと大事なことがあります。それが以下の3つです。
聞き出し、気づきを与える
1on1 ミーティングは、上司が聞き役となり、部下自身に率直な思いを話してもらう場所です。
上司が上手く思いを引き出せれば、部下は自分で話しながら、自分の潜在的な考えや課題に気づき、それがより明確になっていきます。これは「オートクライン効果」と呼ばれるものです。
「オートクライン効果」とは、もともと医学用語で「細胞から分泌されたものが、その細胞自身に作用する」という意味。
実はこれこそ、コミュニケーション分野において有効性が広く認知されている手法の一つでもあります。
部下本人が、自分の内面にある深い思いや本質的課題に気づいた結果、解決の方向性を見出すことができ、ひいては自身の成果や成長につながっていきます。
1on1ミーティングでは、ぜひこの「オートクライン効果」を意識したコミュニケーションを実践していきましょう。
オートクライン効果を意識した質問例
⇩
『その悩みは、どれぐらい深刻なのか?』
⇩
『どういう状態になるのが理想か?』
⇩
『その理想状態を実現するにあたっての阻害要因は?』
⇩
『その阻害要因を取り除くにはどんな方法があると思う?』
…のように部下に考えさせながら、たくさんアウトプットさせ、自ら問題の本質に気づくよう、話を進めていきます。
上司は、部下が自分で解決策のヒントを見つけられるようにサポートしましょう。
話しやすい風土醸成に
先にも説明した通り、話しやすい雰囲気作りをすることで、1on1ミーティングは部下にとって『本音で話せる快適空間』であると徐々に認識してもらえるはずです。
その雰囲気作りが上手くいけば、1対1のミーティング時だけでなく、職場環境にも風通しの良い変化を生み出すことになります。
1on1ミーティングの場にメリットを感じた部下は、上司、組織への信頼度も高まり、積極的な行動を見せるようになります。その姿勢が、チーム全体に広がっていくことも「風土醸成」の狙いの一つ。効果的なマネジメントの後押しにもなります。
形骸化しない工夫を
大いなる期待を込めて始まった1on1ミーティングも、しばらくすると目的への意識が薄れ、単なる“2人だけのムダ会議”に陥ることが多々あります。
なんとなく、「このミーティングは意味があるのかな?」と互いに感じながらも、人間本来が持つ「変化を嫌う」性質によって、ダラダラと続けてしまいがち。
そんな形骸化のミーティングは絶対に避けなければなりません。目的に常にさかのぼり、継続的改善を肝に銘じながら、一回一回の大切なミーティングを意味のある時間にしなければならないのです。
そのためにはミーティングの最後に、「内容の振り返り」や「今回の進め方の振り返り」を行い、部下から改善すべき点などを指摘してもらうことが必須。上司はその指摘を受け止め、感謝を述べ、次回のミーティングの糧にすべきなのです。
まとめ
1on1ミーティングで話すべきテーマは業務内容からプライベートまで様々。しかしそれらは、あくまで話のきっかけでしかありません。
そこからいかに、部下の本音と素直な感情を引き出し、実りのあるミーティングにするかは上司の手腕にかかっています。
コミュニケーションを通じて、互いの人間性をぶつけ合い、より深いところから業務改善・成長支援を行えるよう、目的意識を忘れずに取り組んでください。
さらに効果的な1on1ミーティングにするための話すテーマや有意義な時間にするためのコツを学べる1on1ミーティング研修、マネジメント研修があります。興味がある方はこちらから。