会社組織において、マネジメントという考え方は非常に重要視されています。しかし、そもそもマネジメントとは何なのか、言葉の定義を明確に説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

「マネジメント」という考え方は、元々経営学者のピーター・ドラッカーが提唱したものです。ドラッカーの著書は、今でも多くのビジネスマンに読まれています。しかし、ドラッカーの理論は専門性が高く、本を読むだけでは難解すぎて理解できないという声もよく耳にします。

本記事ではドラッカーが提唱したマネジメント理論の基本を簡潔に説明し、合わせてドラッカー流マネジメントの効率的な学習・実践法を紹介します。

ドラッカーが提唱した「マネジメント」とは?

ピーター・ドラッカーは、20世紀を代表する経営学者の一人であり、マネジメント理論の第一人者です。日本国内だけで100万部を突破した「マネジメント[エッセンシャル版]」の他、経営戦略や組織の構築、リーダーシップ等に関する多数の著書を執筆しています。

ドラッカーの書籍を見ると、組織のマネジメントを取り上げたものと、社会や政治を取り上げたものの2種類がありますが、彼の関心事は常に「人を幸福にすること」でした。組織の中にいる人間がどうすれば幸福になるのか。その問いを追究し続けた結果、独自の理論が生まれたのです。

ドラッカーは、著書「明日を支配するもの」の中でマネジメントを「組織をして成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しました。また、著書「マネジメント」の中では、マネジメントの3つの役割について次のようにまとめています。

    1.  企業、病院、大学のいずれであれ、自らの組織に特有の目的と使命を果たす。
    2.  仕事を生産的なものにして働く人たちに成果を上げさせる。
    3.  自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題解決に貢献する。

ようするに、ドラッカーは組織が成果を上げることを前提とした上で、あらゆる組織で共通して働く人はもちろんのこと、社会にも役立つ考え方を体系化したのです。

ドラッカー流マネジメントの基礎知識

ドラッカーのマネジメント理論は、独自の思想体系に基づいています。彼は、マネジメントの本質は目標設定、計画、実行、評価、改善のサイクルであると考え、それをPDCAサイクルと呼びました。

また、ドラッカーは、組織の中での役割や職務を明確化することが重要であるとし、組織の構造と機能を分析することで、組織の問題を把握し、改善策を導き出す方法を提唱しました。

合わせてドラッカーの理論では、マネジメントを行う管理者のリーダーシップも重要視しています。組織のリーダーは構成員にその方向性を示し、全体を鼓舞する役割があるというのがドラッカーの考え方です。ドラッカーの提唱するマネジメントにおいて、リーダーは組織の使命やビジョンを明確にし、従業員を巻き込んで目標達成に向けて取り組むことが期待されています。

ドラッカー流マネジメントを効果的に学習・実践するための5ステップ

ドラッカー流のマネジメントは、特に管理者クラス以上の社員や経営者にとって非常に有用です。しかし、その理論を効果的に学習・実践していくためには、著書を読むだけでは不十分なことが大半です。したがって、次のような5ステップを経ることが望ましいでしょう。

  1. ドラッカーの本を読み、概要を理解する
  2. 目標管理制度(MBO)など、自社にあった理論を特に学ぶ
  3. ドラッカーが実際に関わった企業や組織の事例を検討する
  4. 事例を参考に、自社内でマネジメントの原則や手法を実践する
  5. 4と並行してマネジメントに必要なスキルを磨く

ここで大切なのは、理論や手法を学ぶだけでなく、実際に実践しながら改善を図っていくことです。そのためにも、実践と並行しながら必要なスキルの向上にも取り組んでいくとよいでしょう。

ドラッカー流マネジメントに必要な5つのスキル

マネジメントに必要な能力は様々ですが、ドラッカーの著書「マネジメント 基本と原則」によると次のスキルが必要だといわれています。

  • 目標を設定する能力
  • 組織化する能力
  • コミュニケーション能力
  • 評価測定能力
  • 問題解決能力

それぞれの内容を簡単に説明すると、まず目標を設定する能力とは、組織としての成果を軸に、多様な視点で適切な目標を設定する能力のことです。ドラッカーは目標設定の観点として、「短期的目標」「長期的目標」「無形の目標」「部下の仕事ぶりと態度における目標」「社会に対する責任についての目標」の5つを挙げました。これらの5つを状況に応じて適切に使い分ける必要があります。

組織化する能力とは、人を束ね、組織として機能させる力のことです。組織のリソースが何かを常に考え、そのリソースを強い力に変えつつ、弱みを削ぎ落していくことで、組織全体を昇華させていくことが求められます。

コミュニケーション能力については、ドラッカーは著書の中で「知覚であり、期待であり、欲求であり、情報法ではない」と定義しています。ようは、相手の期待や欲求をきちんと理解・活用し、単に情報を提供するのではなく相手に知覚してもらえるようにするプロセスが必要なのです。

評価測定能力とは、組織を構成する人を適切に評価するための能力です。組織に属する人の欲求やニーズをきちんと評価し、評価に対する具体策を管理することで、組織で働く人は自らの位置付けや役割を理解していくとドラッカーは述べています。

最後に、問題を見極め、適切に対処する力が問題解決能力です。ドラッカーは問題を障害とは認識せず、組織が成果を出していくための可能性だと捉えました。

これら5つのスキルは、プロジェクトマネジメントの成否を左右する能力でもあるため、近年多くの企業で重要視されています。そのため当社でもよく研修のご相談を頂きます。

現場での実践と合わせて、社内のマネージャーを育成するべく、当社では様々なプログラムを用意しています。貴社の経営課題や実践課題にあったご提案をさせていただきますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

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