今回のコラムは、ありがちな「残念なプレゼンの構成」とその回避の仕方についてです。
より伝わるプレゼンを実現するためのエッセンスを凝縮した内容に仕立てたつもりです。ぜひご一読ください。
「プレゼンのエンディングは、飲み会におけるお茶漬けだ」とは?
「プレゼンのエンディングは、飲み会におけるお茶漬けだ」
私がプレゼンテーション指導でよく言っていることの1つです。
どういうことなのか?
「プレゼンテーションのエンディングには、『一番の見どころ』を持ってくるのでなく、あくまで脇役的な内容を持ってきて、さらっと終わるのが理想である」という意味で言っています。
そのことを飲み会における料理に喩えるとイメージしてもらいやすいから、冒頭の言葉で表現しているのです。
あなたも想像してみて下さい。
飲み会において、唐揚げやお刺身、焼き鳥といったしっかり食欲を満たしてくれる料理はメインパートに来るべきであり、最後の締めではないはず。
そして、お茶漬けのようなあっさりしたものが、「締め」に相応しいでしょう。
これはプレゼンテーションでも同じです。
特に、ビジネスプレゼンにおいては、主役はエンディングではありません。
なのに、多くの話し手は、プレゼンの「締め」である「エンディング」パートを充実させすぎているのです。
例を挙げるなら・・
- 興味をそそられる面白い事例がエンディングではじめて語られる
- プレゼンの最後を素晴らしく練られたコンセプト・ワードで締める
など。
これを見て、あなたは「良いことじゃないか。何が問題なのか?」と思ったかもしれません。
もちろん、「エンディングが充実していること」自体が問題なのではありません。
そこに至るまでのイントロからボディ(本論)にかけての展開、内容が問題なのです
プレゼンは「終わり良ければ総て良し」ではない
イントロが聞き手の興味を引かせるものになっておらず、ボディの論理展開の納得性も今ひとつなのに、エンディングだけがやたらインパクトがある。
「なんともったいない!」と言わざるを得ません。
プレゼンテーションにおける「見どころ」パートが来るのが遅すぎます。
聞き手は、最初から最後まで100%の集中力で、前のめりに聞いているわけではありません。
いくらエンディングでインパクトあるパートが来たとしても、前半がつまらなければ、「取るに足らないプレゼン」のレッテルを貼られて、早々と心が離れてしまいます。
その上で、エンディングで素晴らしいコンテンツを披露しても、「時すでに遅し」なのです。
優れたプレゼンの基本的な流れは、「イントロで聞く気にさせて、ボディで口説く。エンディングはさらっと締める」
だから、冒頭の「プレゼンのエンディングは、飲み会におけるお茶漬けだ」のフレーズをことあるごとに強調しているのです。
なぜ、エンディング中心になってしまうのか?
では、なぜ多くのプレゼンターは、エンディングに「とっておき」のメインディッシュを出してしまうのでしょうか?
1つの原因は、起承転結のフォーマットに慣れすぎてしまっているから。
起承転結は、「結」のパートがハイライトになる構成です。多くの場合、「起承転」の部分が長くなりすぎて、聞き手を退屈させてしま
います。
小説などには向いていますが、ビジネスプレゼンテーションには不向きなフォーマットです。
まずは、脱「起承転結」からスタートです。
我々が提唱している「サンドイッチフォーマット」に当てはめると、聞き手の関心を引きつつ、納得感あるビジネスプレゼンの流れになります。
もう1つの原因は、資料作成のプロセスにあります。
ほとんどの人は、オープニングからプレゼンの資料を作っていきます。プレゼン内容をいろいろな観点で考えていくうちに、自然と言葉や中身が練られていきます。
エンディングパートを迎えた頃には、面白い事例を思い出したり、秀逸なメッセージを思いついたりします。それをエンディングに入れると、確かに一見美しく仕上がって見えます。
こうして、「エンディングが充実しすぎた」残念なプレゼンテーションが出来上がるのです。
残念なプレゼン構成を回避する方法
では、どうすればこの状況を改善できるのか?
1つは、いきなりパワーポイントに向かわず、シナリオを練ること。
理想は、「シナリオ作成時間 = パワーポイント作成時間」です。つまり、流れをしっかり考えてから、詳細内容を作り込むということ。
すると、「プレゼンの『見せ場』を流れのどの場面に持ってくると一番効果的か?」がわかるはず。
もう一つは、一旦パワーポイント資料を作ったら、再度全体の流れを俯瞰してみて、「頭でっかち」ならぬ「お尻でっかち」になってないかと検証してみることです。
その際、こう問うてみましょう。
「このプレゼンテーションのどこがハイライトだろうか?」
「聞き手が関心を持ってくれるパートはどこかな?」
そして、それをもっと前に持ってくるのです。
そうすることで、聞き手を惹きつけ、腹落ちしてくれる内容に仕立てていけるはずです。
次回プレゼン資料を作成する際は、肝に銘じて取り掛かっていただければと思います。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。