業種や職種によってビジネスパーソンが身につけるべきスキルは多岐にわたりますが、どんな企業でも重視される能力の一つとして「コミュニケーション力」が挙げられます。
事実、経団連の「新卒採用に関するアンケート調査結果」を見ると、採用選考時に最も重視しているポイントとして「コミュニケーション能力」が1位になっています。
この結果は10数年連続で変わっていないため、コミュニケーション能力がいかに大切と判断されているかが見て取れます。
コミュニケーション能力とは、「対人関係における情報共有や意思の疎通を図る力」を指します。特に管理職の職責を担う人や対外的コミュニケーションの機会がある人ほど相手にわかりやすく伝える力、つまり「説明力」をトレーニングする必要性を感じるようです。
今回は、説明力を日頃から磨くために、どのような取り組みを行えばいいのか、具体的かつ効果的なトレーニング法を解説します。
「説明力」とはどんなスキルなのか?トレーニングを行うメリット
そもそも「説明力とは何なのか?」と聞かれても、すぐにパッと答えられる人は少ないのではないでしょうか?
以下に、説明力の定義やトレーニングによって説明力を磨くメリットについてまとめました。
説明力の定義
説明という言葉を辞書で調べると「解き明かすこと。特に、物事がなぜこうなのかの根拠・理由を明らかにすること」と記載されています。
説明力とは、一言で言えば、相手に物事を理解させる力と言えるでしょう。
説明力を分解してみると、以下の3点になります。
- 相手の知りたい情報に焦点を絞って、説明ができる
- 相手の理解力に合わせた説明ができ、論理的にわかりやすく伝えられる
- 相手の感情面にも配慮した上で、納得を得られる伝え方ができる
業界を問わず、説明力を問われる場面は多岐にわたります。たとえば金融業界の「アカウンタビリティ(説明責任)」や医療業界の「インフォームドコンセント(医者と患者の合意)」のほか、顧客へのプレゼンテーションや商談の場でも説明力は必須です。
説明力をトレーニングするメリット
説明力とは、コミュニケーションスキルの一つです。スキルということは、人それぞれ得意不得意があるとしても、トレーニングによって確実な改善が見込めるものです。
説明力を磨くと、大きく分けて次の3点のメリットがあります。
- 情報伝達の効率が向上するため、コミュニケーションコストを削減できる
- 考え方や情報が的確に相手に伝わるため、周囲の人に動いてもらいやすくなる
- 仕事仲間や顧客から感謝や信頼を得やすくなり、自分自身の評価向上につながる
つまり、説明力が向上すればば、自ずとビジネスの成功率も高まるのです。
「説明力がない人」の特徴とは?
説明力のトレーニングを効果的に実施するためには、まず「説明力がない人」の特徴を正確に理解しておく必要があります。具体的な特徴がわかれば、後は自分に当てはまっている箇所を重点的に鍛えればよいからです。
説明力がない人の特徴として、以下の5点が挙げられます。自分のコミュニケーションスタイルと見比べて、自己診断をしてみましょう。
- 話が長くなりやすく、要点がわかりにくいと言われる
- 専門用語や難しい言葉をつい多用してしまう
- あいまいな表現が多く、データや事例を用いた説明が苦手
- 声が小さく、早口になってしまう
- 相手と目を合わせることができず、仕草もおどおどしてしまう
これらの改善ポイントは、それぞれ「話の構成」「言葉の選び方」「表現方法」「話し方」「体の使い方」と言い換えることができます。
自分の苦手ポイントを分析し、それぞれに合わせたトレーニングを重点的に行うことで、あなたの説明力は飛躍的に改善します。
説明力を向上させるトレーニング5選
「話の構成」「言葉の選び方」「表現方法」「話し方」「体の使い方」、それぞれのポイントに合わせた説明力のトレーニング法を5つご紹介します。
「話の構成」トレーニング:「型」を身につける
人間の脳は、マルチタスクが苦手です。そのため、話す内容と構成を同時に考えるのではなく、先に構成ありきで話を組み立てることで「分かりやすい説明」が出来るようになります。
構成のポイントは、先に話のゴールと方向性を示すこと。結論を先に伝えて、詳細情報は後から話すというパターンを意識して話すようにしましょう。
意識だけだとなかなか改善しづらいため、「これから何を話すのか」を相手に予告するフレーズを身につけ、積極的に口に出していくとよいでしょう。
- 今回のテーマは○○です。(話の趣旨を伝える)
- この話の要点は、○点あります。(ポイントを伝える)
- 具体的には… (具体例を話す)
- なぜかというと…(根拠を話す)
- 最後にまとめると…(結論をまとめる)
上記のフレーズはいずれも使いやすいものばかりです。物事を説明する際にこのフレーズを取り入れていくだけで、分かりやすい説明の型が身につきます。
「言葉の選び方」トレーニング:小中学生に話す場を想定する
専門用語や難しい言葉をつい多用してしまう人は、小中学生に対して話す場を想定して、練習を行うとよいでしょう。
小中学生に伝わる話し方ができれば、その業界や業種の知識が全くない相手に対しても分かりやすく説明できます。
語彙力が足りなかったり、表現が思いつかなかったりする場合は、初心者向けのビジネス書を参考にするとよいでしょう。「世界一やさしい~」「サルでも分かる~」などのフレーズがタイトルに入っている本であれば、特にわかりやすさを重視した表現が採用されています。
自分の話したいテーマと近いジャンルの入門書があれば、ぜひ言葉選びを真似て、取り入れていくとよいでしょう。
「表現方法」トレーニング:数字と事例を取り入れる
「~だと思う」などのあいまいな表現が多いと、説明における説得力がなくなってしまいます。そういった人には、数字や事例を入れて語るトレーニングをおすすめします。
話すテーマに合わせて、たとえば市場調査のデータや売上など使える数字があれば事前に調べておいて、話に入れてみましょう。それだけで、説得力が段違いに変わります。
テーマ的に数字がうまく使えない場合は、事例や例え話を使いましょう。テレビやネット記事で見聞きしたこと、自分が実際に体験したことなど、日常生活の中にネタは無数にあるはずです。
日頃からアンテナを張っておくことで、様々な説明の場面で活用できる事例が自ずと集まってきます。「たとえば…」というフレーズを口に出すようにすると、説明の際に事例を話す流れが自然に作リ出せるので、ぜひチャレンジしてみましょう。
「話し方」トレーニング:発声練習
声が小さくなってしまったり、早口になってしまったりする人は、ボイストレーニングを取り入れるとよいでしょう。
胸を張って、腹から声を出すように意識すると、それだけで大きい、響く声が出るようになります。
また、口を縦に大きく開いて話すのもお勧めです。喉が開くことで声が出やすくなるだけでなく、早口も解消することにも繋がり、一石二鳥の効果があるやり方です。
慣れないうちは、30秒や1分程度の短い時間に区切って練習するといいでしょう。短い時間であれば、声の大きさや話すスピードを意識して話し続けることができます。
「体の使い方」トレーニング:目線とボディランゲージ
日本人の多くが、目配りやボディランゲージを苦手としています。逆に言えば、これらの非言語コミュニケーションは、説明力で大きく差がつきやすいポイントといえます。
目配りやボディランゲージを磨くためには、対多数のプレゼンやスピーチの練習をこなすのが効果的です。たとえば社内でスピーチコンテストを開催したり、社外で開催されているコンテストなどに挑戦してみたりするとよいでしょう。
スピーチコンテストについては別記事に詳しくまとめていますので、合わせて参考にして頂ければと思います。
まとめ
説明力は、一朝一夕で身につくものではありませんが、トレーニングすれば誰でも習得可能なスキルです。本記事を参考に、自分が苦手なポイントを分析した上で、日頃からトレーニングを積み重ねていきましょう。
この記事で書かれている内容よりもさらに説明力の向上を目指す場合は、社内外のセミナーや研修などで実践的に学ぶのもおすすめです。
説明力を向上させるためには、トレーニングの質と量、そして何より実践の場数がものをいいます。学んだ内容をぜひ日頃の業務でも活かしていきましょう。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。