コンテンツマーケティングや社内外の教育・プレゼンテーションなど様々な場面で利用されている手法の一つが「ストーリーテリング(Story Telling)」です。

ストーリーテリングとは、英語の名の通り「物語を語ること」を指します。アメリカでは「ストーリーテラー」という役職が存在するほど、非常に多くの企業が広報や営業、教育などにその効果を取り入れています。

そもそも「ストーリーテリング」とは何なのか。また、具体的にこれから活用するためにはどんな知識を身につけておくべきなのか。

「物語」の力をこれから取り入れてみたい企業の方向けに、今回は「ストーリーテリング」の基礎知識をくわしく解説します。

ストーリーテリングの定義とは:ビジネスで「物語」を活用する手法

ストーリーテリングとは、話の中に「物語」を組み入れることで発信者が伝えたいメッセージを補強し、相手により強い印象や深い理解を促す手法です。

本来は、吟遊詩人やネイティブアメリカンが口伝などで物語を後世に伝えていくことを指していた用語のようですが、最近では「ストーリーテリング」といえばビジネスの現場での用途をイメージする人の方が増えてきました。

「ストーリーテリング」について記されたビジネス書も多数出版されており、読書を通じて具体的な理論や実践例を学ぶことができます。

「物語」とは何なのか?

ストーリーテリングで語られる「物語」とは、伝えたいメッセージに関連した発信者や他者の体験談やエピソードなどを指します。

テレビCMなどマスメディアでストーリーを使う場合は、会社の理念や目指しているビジョンを伝えたり、商品・サービスを利用することで顧客が得られる理想の未来を示したりするケースが多く見られます。

モノや情報にあふれている現代社会では、伝えたいメッセージの内容以上に、発信者が「誰」なのかを重視するケースが多々あります。

話し手は「誰」なのか、そのキャラクターやオリジナリティを打ち出したい場面では、ストーリーテリングは非常に優れた効果を発揮します。

ストーリーテリングをビジネスに導入することで期待できる効果とは

ストーリーテリングをビジネスで活用できる場面は多岐にわたります。具体的な活用シーンについては別記事で詳しく紹介していますが、ストーリーテリングの手法を使うとどのような効果が見込めるのでしょうか。

ストーリーテリングを導入する効果は大別して3つあります。

  • 共感が高まる
  • 記憶への定着度が増す
  • 動機付けにつながる

それぞれの効果を詳しく確認していきましょう。

1.共感が高まる

小説や映画を楽しんでいるときに、自然と登場人物に感情移入してしまった経験を持つ人は多いのではないでしょうか。ストーリーが持つ「物語の世界」に人を引き込む力を利用すると、聞き手の共感を高め、深い理解を得やすくなります。

共感を高めるために大切なのは、話されているエピソードや体験談などが聞き手にとって類似性や親和性のある内容かどうかという点です。

たとえば成功者の過去の失敗談に多くの人は共感を覚えます。同じような失敗をした経験があるからこそ、聞き手は共感し、話に引き込まれていくのです。

スピーチやプレゼンテーションの際にもストーリーテリングを上手く取り入れると、相手に集中して話を聞いてもらいやすくなるでしょう。

2. 記憶への定着度が増す

ストーリーを活用すると、商品やサービスの機能を訴求するよりも、相手の記憶に定着しやすいというメリットがあります

実際に、スタンフォード大学のJennifer Aaker教授の研究によると、人間は論理的な事実よりもストーリーの方が22倍も記憶に定着しやすいことが明らかになっています。

たとえば採用面接の場面をイメージしてみましょう。履歴書に書かれている情報の羅列はほとんど印象に残りませんが、物語仕立てで語られたエピソードは思い出しやすいものです。

セミナーや研修の場面でも、大事なポイントほど付随するストーリーを語ることで、聴講者の学習効率が高まるでしょう。また講師と聴衆の距離を縮め、会場の一体感を作り出す効果も期待できます。

このように、ストーリーテリングは相手の記憶と強く結びつくため、相手に強い印象を与えたいときに有効な手法なのです。

3. 動機付けになる

ストーリーテリングはしばしば、顧客に対して商品・サービスを手にした後の理想の未来を示す目的で使われます。研修やセミナーであれば、学習したことを活かすことで得られるメリットの提示にも活用されるでしょう。

顧客あるいは受講者を主人公にしたストーリーが語られると、聞き手はその内容を「自分事」として認識しやすくなります。

得られるメリットや目指すべきゴールが「自分事」としてリアリティが増すと、おのずと人は行動を起こすようになります。その結果、商品やサービスへの問い合わせや購入が発生したり、受講者が能動的に学習や実践に励むようになったりといった効果が期待できます。

人を動かしたいのであれば、ぜひ「物語の力」を上手に取り入れましょう。

ストーリーテリングのポイント:事前に準備しておくべきこととは

マーケティングやセミナーなど、どのような場面で使うにしても、ストーリーテリングを活用するためには事前の勉強や準備が欠かせません。

人の心を動かすストーリーには、決まった「型」があります。事前にストーリーテリングの書籍などを読み、理解を深めておきましょう。

またストーリーを組み立てる際には、自己分析とペルソナ(想定している聞き手)分析が不可欠です。

聞き手の属性や悩み、関心ごとを整理した上で、話したい内容に合わせて使えそうなエピソードや体験を洗い出し、具体的にまとめていきましょう。

その際、誰の目線でストーリーを語るのかも重要なポイントです。

相手にとってのメリットや未来を示したいのであれば、主人公は顧客や受講者に設定すべきです。逆に、聞き手を話に巻き込み、共感を高めたいのであれば、主人公はスピーカーになります。

こうした点に注意しながら、自分が話したいことと顧客が聞きたいことが重複する内容を緩急つけて伝えていくのがストーリーテリングのポイントです。

話の組み立て方や演出をより効率よく学びたい人は、ぜひストーリーテリングが上手な人を観察し、真似るところから始めてみましょう。

たとえば、Appleの創業者、スティーブ・ジョブズは「プレゼンテーションの天才」と呼ばれたストーリーテリングの名手でした。彼のプレゼンの中にはYouTubeで視聴できるものも多いので、教材には最適です。

その他、社内外の研修やセミナーに参加した際に、ストーリーテリングが上手な講師と出会うこともあるでしょう。「この講師の話は引き込まれるな」と感じたら、ぜひ学習材料としてしっかり観察することをお勧めします。

まとめ

ストーリーテリングは聞き手を自然と話に巻き込める強力な手法です。あなたがどの部署にいたとしても、ストーリーの力は様々な場面で活用する機会があるでしょう。

この機会にぜひ、ストーリーテリングを基礎から学んでみて頂ければと思います。

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