from 西野浩輝

「自分のプレゼン内容に自信を持て」とは言うけれど・・・

いきなりですが、以下のようなありがちなシーンを思い浮かべてください。

あなたが、ある企画を社内で通そうとして、経営幹部の前でプレゼンテーションをした。聞き手の1人から「それって本当にやる意味あるの?」といったネガティブな反応をされ、たちまちひるんでしまい、その後のプレゼンが一気にトーンダウン。

結局腰砕けのプレゼンテーションになってしまい、企画は通らずじまい。

「ここまでの努力は何だったんだよ・・・」とやるせない気持ちで会議室をあとにした。

こういう経験は、誰でも一度や二度はあると思います。

反対意見を言われてトーンダウンしてしまうのは、自分の提案内容に自信を持ち切れていないのが大きな原因です。

そして、そのことを見抜いた上司は追い打ちをかけるように、あなたにこう言うかもしれません。

「もっと自信を持ってプレゼンしろ」「自分が提案する内容を信じ切れ」と。たしかに一見、もっともなアドバイスです。

ただ、言われたほうはこう思うのではないでしょうか?

「そんなことはわかっている!」
「むしろ、どうやったら自信と信念を持ってプレゼンテーションできるかを教えてほしい!」

と。

まさに多くの人の心の叫びでしょう。

そんな疑問への答えとして、私の取引先の担当者であるOさんの事例をご紹介したいと思います。

Oさんは「自分を信じ切ることで、迫力あるプレゼンテーションに仕立て上げ、自分の企画をことごとく社内で通していく」スーパープレゼンターです。

私は「なぜそんなに説得力あるプレゼンができるのか?」「なぜ自分の信念をそこまで強く持つことができるのか?」ということに興味を持ち、Oさんにインタビューをさせてもらいました。

詳しく聞いてみると、そこには様々な工夫があったのです。

以下にそのポイントをご紹介したいと思います。

Oさんがまずはじめに行うこと

まず、Oさんの第一声が印象的でした。

「とにかく大事なのは、いきなり『どんな風に提案しようか?』ということから考え始めないこと。Howの前にまずWhy(なぜ)なのです」と。

つまり

「なぜこの企画が大事で、これを実行することがこの部署、関係者、会社全体ひいては社会にどんな意義があるのか?」
「なぜこの提案を行うのが、自分である必要があるのか?」

といったことから考えるということ。

根本の「Why」にまで遡って突き詰めるからこそ、本質的で芯を食った提案内容になるのです。

それだけでなく、改めてこの企画の意義・重要性を強く実感することで提案内容への愛着も湧いてくるため、自分の思いもどんどん深くなっていくのだそうです。

そこまでしっかり「Why」を考え抜いた上で、はじめて具体的な企画内容・実現方法(How)を徐々に形にしていきます。

ただし、内容が固まったからと言って、プレゼンの準備作業が終わるわけではありません。

特に社内のプレゼンテーションで乗り切らなければならないのは、質疑応答の場面。

よりプレゼンの効果を高めるための準備

この準備プロセスにおいても、Oさんは自分なりの工夫をしています。

同僚数人に質問をしてもらうのです。その際、ただ漫然と質問させるのでなく、

「真っ先に反対しそうな、○○本部長になったつもりで質問してほしい」
「できれば意地悪な質問をしてほしい」

と要望します。

それに対して1つ1つ丁寧に答えながら、提案内容の不備や穴を埋めていき、さらに強固なものにしていきます。まさに受験生が難関大学に受かるための「傾向と対策」を徹底して行い、当日「何が来ても怖くない」状態に持っていくわけです。

そしてこの強化のプロセスが、一段と自信と信念を強めてくれるのです。

さらに、事前にキーパーソンに根回しを行い、障害を除いておくのみならず、必要に応じて援護射撃してもらえるようにお願いしておくそうです。

そうやって、入念に「提案プレゼン」と言う名の作品を作り上げます。

そこまで突き詰めるのだから、Aさんの企画提案プレゼンが連戦連勝なのは納得いただけると思います。

Oさんへのインタビューの最後に言ってくれた言葉が奮っていました。

「『ここまでやり切ったんだから』という自信が最大のパワーになる」

と。そう言ったOさんの言葉には魂が宿っていました。

「今回のプレゼンテーションには自信が持ちきれないな」と思ったら、Oさんのように「自分が信じ切れるまで」やり切ってみてください。

新たな世界を切り開けるかもしれません。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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