前回のコラムでは、若手の発信力を上げるための方法についてお話ししましたが、今回はその第二弾です。
今回のテーマは、
「若手の発信力は『質問させること』で鍛える」
です。
その前にまずは、そもそも「なぜ若手が発信できないか?」に遡って考えてみます。
おそらく理由の第一位は、「うまく発信や発言ができなかったときに、気まずい思いをするのが嫌だから」でしょう。よく言う「失敗を恐れて一歩を踏み出せない」という典型的なものです。
例えば、複数の人が参加している会議などで、若手社員に対してあなたが「自発的に意見を言いなさい」と促したとします。
言われた人のうち、一部の方々はすぐ実践できるでしょうが、残りの人達にとってはこの「失敗が怖い」というハードルは想像以上に高く、なかなか実践できないものです。そんな若手に対しては、もう少し低めの階段、ステップを用意してあげるのが有効です。
それが冒頭で話した「質問させること」です。
つまり、「質問させること」は提言や意見をするといった発信よりは、難易度が低く、かつ効果を実感しやすい発信方法を勧めるのです。
質問させる場面をステップごとに設定する
では、どんな場面で質問をさせるといいのでしょうか?
まずは、
「1対1」でのミーティングです
一番難易度が低く、実践しやすい場面のため、ここで「質問すること」自体に慣れさせます。
次が、
「知っている人が複数人参加している会議」です
「1対1」よりはハードルが上がりますが、ネクストステップとしてちょうどいいでしょう。
この階段を登れたら、最後が
「知らない人がたくさん参加している会議やセミナー」で質問させること
もちろん、なかなか勇気のいることですが、ここまでのステップですでに助走がついているはずなので、ちょうど良いチャレンジ度合のはずです。
「頑張って何か1つは質問しよう」と促し、その行為を見届けたら、すかさず「ミッション遂行」を褒めてあげましょう。
「質問すること」が「発信力向上」につながる理由
ではなぜ「質問をする」ことが発信力向上に効果的なのでしょうか?
ずばりマインド面、スキル面の両面からの強化が図れるからです。
まずは、マインド面から
一言で言うと、発信マインドの鍛錬になる、いわゆる度胸がつくということです。
おそらく誰もが経験済みだと思いますが、質問することは多くの場面で結構ドキドキするものですよね?と言っても、所詮は発表者ではないので主役ではありません。
そういう意味で、いきなり発表や提案をするよりは気が楽です。
だから仮にうまく質問できなくても、「大失敗の発表プレゼン」に比べれば、トラウマというほどにはなりません。何より、上手くいけば大きな自信になります。
つまり、質問することは「リスクが少なく、リターンが大きい」行為なのです。
こうやって、確実にマインド面の強化が図れていきます。
もう一つの効果である「スキル面での強化」に関して
質問した際、意図と要点が明確に伝わらないと、相手が戸惑ったり、的外れな答えが返ってきたりして、質疑応答がうまく機能しません。だから、端的でわかりやすい質問を相手に投げかける必要があります。
そうすること自体、自分が言いたいことを的確に相手に伝えるスキル、いわば発信スキルを磨くことにダイレクトに繋がります。
加えて「質問をすること」が良いのは、超短時間でPDCAを回せる点です。
自分の質問が的確だったかどうかがその場ですぐわかるため、自己反省がしやすく、次なる修正・成長を高速で図っていけるのです。
質問することで「発信力」に自信がついた西野の例
最後に私の「質問」に関する体験エピソードをご紹介したいと思います。
今の仕事を始める随分前の若かりし頃、あるセミナーをいち参加者として受講していた時のことです。セミナーのテーマは、「グローバル時代に求められるリーダーシップ」というものでした。
最後の質疑応答セッションで、勇気を振り絞ってこのような質問をしました。
「優れたリーダーシップと、優れた『グローバル』リーダーシップの違いは何でしょうか?」と。
我ながら、良い質問ができたなと思いました。何より、周囲の人達の反応が「おぉ、良い質問じゃないか?!」という雰囲気になったのです。
この経験によって、自分の発信力に関してかなり自信が持てるようになり、それ以来、積極的に質問や発言をするようになりました。自分の「発信力」という点での大きなターニングポイントになったと思います。
このように、良い質問をしたときの成功体験は発信欲を掻き立ててくれ、それが次なる場数、いわば訓練の機会を作ってくれるものです。
社内外のミーティングで、ことあるごとに若手に「質問をせよ!」とけしかけてほしいと思います。発信力がぐんぐん伸びていくこと間違いなしです。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。