「部下をなかなか叱れなくて困っています」こういう悩みを打ち明けるマネジャーが増えています。どうやらこれには2つのパターンがあるようです。
一つは、そもそも性格的に人に厳しく言うことが苦手で、叱れないというもの。もう一つは、パワハラだと勘違いされるのを恐れるが故に叱れないパターン。
まさにマネジャー受難の時代と言えるかもしれません。かと言って、部下を甘やかすだけだと行動改善がなされず、本人が成長しないばかりか、組織や周囲に損失をもたらし続けることになりかねません。
「時にはきつく叱らないとさすがにまずいよな」と思うものの、でも叱ることができない。それで皆さん困っているわけです。
この問題に対する私なりの見解を申し上げましょう。
ずばり「叱らない」こと。
今の世の中、少なくともビジネス社会では「叱る」はもはや死語と言っていい。完全に時代に合っていない概念なのです。ましてや「キツく」なんてもってのほかです。
叱ってはいけない理由
なぜ、叱ってはいけないのか?理由は大きく2つあります。
まず一つは、リスクが高すぎるからです。
パワハラだと認定されると、上司も、部署も、会社全体も被る損失は計り知れません。「パワハラ訴訟」のニュースを見れば一目瞭然でしょう。
もう一つは、部下のモチベーションや成長において大きなマイナスをもたらしかねないから。
キツく叱ることで、部下の「すいませんでした」を引き出して満足しているのは多くの場合、上司だけです。部下は得てして内心で反発して上司への信頼を低下させるか、逆に傷ついて無駄に自信喪失しているもの。
では、部下がミスをしたり、改善余地のある行動を取っても、放置するのかというと、もちろんそうではありません。
「キツく叱る」のではなく、「あつく注意する、諭す」のです。
キーワードは2つの「あつく」
ここでいう「あつく」は2つの漢字が当てはまります。
一つは、「厚く」です。
「部下本人の行動改善が必要な理由」を多面的に、分厚く語るということ。
たとえば、以下のように。
- 「部下のその行為」が会社、周囲のメンバー、部下自身、および 顧客へどんな影響を及ぼしているのかをしっかりと語る
- 「自分としてそのことは残念だし、悔しい」という感情を述べる
- そういう状況を作ってしまった自分のマネジメントの非を詫びる
- 「今後どうするといいか?」を一緒に考えつつ、解決策を導く
- 改善してもらうことへの期待を言う
そこまで言うと、さすがにほとんどの部下は「これはまずいことをした。そんなに迷惑をかけているのか!」と改善や行動変容の必要性を痛感してくれるはず。
もう一つの「あつく」は「熱く」です。
冷静に淡々と注意しても、本気度は伝わりにくいものです。下手をすれば、嫌味や皮肉に取られかねません。
「熱意にほだされる」という言葉がある通り、パッションは人の心を動かすもの。心からの熱い思いを乗せて注意するのが、上司の愛情と言うものではないでしょうか?
今の時代、叱れるマネジャーにならなくていい。いやむしろ、逆なのです。
「きつく叱らない、あつく注意せよ」
ぜひ心に留めていただきたいと思います。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。