「オンライン会議でメンバーが顔出しをしてくれない。相手の表情が見えないので話しにくい」「かと言って、強要するとパワハラになる。一体どうすればいいのか?」
私がオンラインコミュニケーション研修等で、リーダー層からよく聞く悩みの1つです。
今回はこの「顔出しをしてもらえない」というお悩みをスムーズに解決するステップをお伝えしたいと思います。
メンバーが顔出しをしない理由
そもそもなぜメンバーは顔出しをしてくれないのでしょうか?
以下の3つの理由に集約されると思います。
1つは、「何となく」面倒だから。
たかが社内ミーティングで顔出しするために、身だしなみを整えたりするのは誰だって面倒くさいと思うものです。
もう1つは、プライベートな空間を見られるのが「何となく」気恥しいから。
最後が、ネット環境を考慮してビデオをオフにしているから。
確かに、テレワークが始まった当初は、ZoomやTeamsのビデオボタンをオフにした方が、少しでもインターネットが安定するのでそうしていた人も多かったのは事実です。
ただし、今はネットやオンライン会議ツールを含めたオンライン環境が急速に整いつつあります。にもかかわらず、以前の「ビデオオフ」が習慣化してしまい、そのまま「何となく」続けているだけのケースが大半です。
結局は、ほとんどが「何となく」の理由なのです。
以上のことを踏まえた上で、どのような策を講じるといいのでしょうか?一旦「顔出ししない」ことが定着してしまっていると、反転させるのは簡単なことではありません。
したがって、慎重にステップを踏んで行う必要があります。
「マインド醸成」「ルール化」「体現」の3ステップで進めていきましょう。
3つのステップを踏んで実現する
まず第一ステップは「マインド醸成」。
顔出しする意味、重要性をメンバーにしっかり説きます。
その際、「顔出ししないコミュニケーションだと周囲にどういうマイナス影響を与えるか?」という観点で説明すると、重要性や深刻さが伝わりやすくなります。
ちなみに、クロスリバー社の調査によると、「顔出しをした方がオンライン・コミュニケーションの効果性が40%も上がる」というデータがあります。
この数字を見せれば、「身だしなみを整えたり、お化粧をするのが面倒」というメンバーも「相手やチームの成果のためには少しの準備をするのは当然」と納得してくれるはず。
それでも面倒臭がる人には「バーチャルオフィスに出社すると思って」「通勤時間を考えるとそんなに大変な準備じゃないはず」とダメ押しすればさすがにYesと言わざるを得ないでしょう。
「顔出しすることが大事だ」という意識をメンバー間で共有した上で、最も大事な第二ステップに入ります。
ポイントは、「ルール化」です。
具体的には「オンライン会議の基本ルール」を定め、その中に「顔出しすること」を項目に入れます。つまり、「顔出し=標準」「顔出ししない = 特例」であるという共通の理解にしてしまいます。
するとメンバーは、「顔出ししない」ことを後ろめたく感じるようになり、自然と顔出しするようになります。
ちなみに、ルール化する際はメンバーみんなで一緒に決めるのをお勧めします。「人は自己矛盾を起こしたくないので、自分が決めたことは守ろうとするもの」という性質を利用するのです。
仕上げである第三ステップは「体現」です。
自分自身が範を示すことで、メンバーに「顔見せ」の効果を実感させることです。笑顔とリアクションたっぷりにコミュニケーションをして、雰囲気をよくし、快適な空間を作ります。
そうすることで、「オンラインでもこんなに話しやすいんだな」「やっぱり顔出しすると違うよね」と思わせます。
この3ステップに沿って手を打てば、スムーズに「顔出し」を実現・定着させることができるでしょう。
気恥ずかしさやネット環境が原因の対処はどうすればいいか
なお、はじめに言った「気恥しい」「ネット環境がよくない」問題への最初についてのアドバイスです。
まずは、「自分の部屋を見られるのは気恥しい」という人に対して。解決策は至ってシンプルです。
バーチャル背景を使うようにアドバイスするのみです。
2つめの「ネットが不安定な人がいる」場合は、以下のようにすると良いでしょう。
会議スタート時は、メンバー全員がビデオをオンにして、互いに顔を見せて挨拶します。その上で、ネットの安定度を確かめさせます。
もし不安定であればしばらくオフにし、また安定したらオンにする。これを繰り返してもらうのです。
ネットは日進月歩で改善しているので、そのうち「常時ビデオオン」が可能になると思います。
注意!これはやってはいけません
最後にNG行動についてです。
顔出しの強要はしないのはもちろんのこと、仮にお願いするにしても、「今日は状況的に顔出しできないって感じですかね・・?」とソフトに尋ねるようにします。
あとは、プライベートに踏み込まないこと。
この2つを守らないと、今急増している「リモハラ(リモートハラスメント)」になる恐れがあるので、気を付けましょう。
実は、当社内でも数年前にこのプロセスを経験しました。
そして、そこから得た知見・ノウハウを元にクライアントにも同様のアドバイスをしています。今やほとんどの方は「顔出ししない会議へはもう戻れない」「あんな生産性の低い時間、苦痛な時間を過ごしたくない」と口を揃えて言います。
今回ご紹介した「マインド醸成」「ルール化」「体現」の3ステップを踏んで、顔出しにトライしてみてください
それだけで生産性が数十パーセントも向上するのだから、すぐにやらない手はないですよね?
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。