from 西野浩輝

ベネッセ教育総合研究所の調査によると、「読書量と読解力は比例しない」というデータが出ています。おそらく、多くの方は意外だと思ったのではないでしょうか?

私がはじめこのデータを見た時は「意外」を通り越して、ショックでした。ある意味、読書そのものを否定された気がしたので。

では、そもそも「読解力」とは何なのでしょう?

一言で言うと、文章の内容を深く理解する力です。

読書量と読解力が比例しない理由

国際的学力調査PISAでは「読解力」を以下の4つのことができる力であると定義しています。

(1)情報の取り出し
(2)解釈
(3)熟考
(4)評価

まとめると、「文章の中から重要なパートを抜き出し、それを深堀して自分なりに咀嚼できる力」のようです。いわば「思考の総合力」とも呼べるような根本の能力と言えます。

つまり、読書量と読解力が比例しないのは、単に情報をインプットするだけでは、思考力は育たないということです。

確かに言われてみればその通りですね。

では、本当にこの「根本の思考力」を読書によって高めることはできないのでしょうか?

「根本の思考力」を読書によって高める方法

実は実現する方法があるのです。

ニューヨーク州立大学のグローバー・ホワイトハースト博士らの研究チームが開発した「ダイアロジック・リーディング(対話型読書)」というメソッドです。

文字通り、対話をしながら読み聞かせをする手法です。

その際、柱となる2つの質問を駆使して進めるのがコツなのだそうです。

「あなたはどう思う?(What do you think?)」
「なぜそう思う?(Why do you think so?)」

まさに、根本の思考力を育てる、「What」と「Why」の「2大・キラークエスチョン」とも言えます。

この手法は、我々ビジネスパーソンにも応用できます。とりわけ、部下や後輩を指導育成する際に使うと効果的でしょう。

ビジネスシーンでの活用方法

典型的な場面が、営業同行です。

私が指導する中でいろいろな営業担当者の話を聞いていると、せっかくの同行場面をうまく活用できていないようです。

ありがちなのが、「上司・先輩の営業場面にメンバーを同席させて、見させるだけ」で終わっているケース。これでは、もったいなさすぎます。確かに、優れた営業を観察することである程度は学べますが、その意図や真意などを読み取るのは難しく、見るだけで先輩の技術を盗むのは至難の業です。

そこで、この「2大・キラークエスチョン」の出番です。

商談が終わったら、部下・後輩に対して、

 「どういう点(What)が参考になった?」
 「何で(Why)そう思う?」
 「何で(Why)私があそこで、〇〇〇という返しをしたと思う?×××の質問をしたと思う?」

というように「What」と「Why」で質問をしていくのです。

そうすることで、メンバーが商談場面の中から重要なパートを抜き出し、それを深堀して自分なりに咀嚼できる力が育っていきます。

この「根本の思考力」が育つと、全ての他者の行動から技術を盗み取っていくことができるのです。

ちなみに、これは営業場面以外でも使える手法です。

例えば、会議のあとで、上記同様2つのキラークエスチョンを投げかければ、まさに「根本の思考力」を育てることができます。

ぜひ、部下・後輩育成に役立てていただければと思います。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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