『研修期間』と『試用期間』の違いについて知っておくべきこと
弊社で提供させていただいている研修プログラムの受講者様は、入社後や異動後の研修期間中の方もいらっしゃると思います。
「研修期間」とは、決まった定義がある訳ではありませんが、実際に業務を行うためのスキルを身に付ける練習期間や、実際の業務に携わりながら業務内容を体得するまでの見習いの期間を指します。
研修期間とよく似た言葉で「試用期間」があります。
「試用期間」とは、本採用の前に採用予定の人に実際の業務を行ってもらい、勤務態度や技術・能力などを見て、本採用に至るかどうかを見極めるための期間です。
「研修期間」と「試用期間」の違いについて詳しく見ていきます。
研修期間と試用期間の違い
「試用期間」は本採用を前提としたお試し雇用の期間であり、「研修期間」は本採用後の仕事の基本を学ぶ期間です。
試用期間中は、企業は採用予定の人に実際に業務を行ってもらい、本採用をするかどうか、適正をチェックします。一方、研修期間では、既に本採用した人が通常業務を行えるようになるために、スキルアップする期間となっています。
つまり、研修期間と試用期間の違いとは、通常業務を行わせるか否かにあります。
研修期間と試用期間の長さ
研修期間は数週間から1ヶ月程度が一般的です。勤務時間で区切る場合もあります。
一方、試用期間は一般的に1~3カ月、長くて6カ月程度の期間を取る企業が多いようです。
期間を決めて雇用する場合の契約期間は労働基準法で原則1年以下となっているため、試用期間は最長1年と一般的に理解されています。
研修期間の延長可能性
研修期間は長くても1カ月程度が一般的で、期間が延長されることはあまりありません。研修期間が終わった後は通常業務に移ります。試用期間は、本採用するかどうかを見極めるために、期間を延長することもあります。
試用期間延長
試用は開始時に合意している契約書に基づいているため、会社の一方的な都合による期間の延長は原則認められていません。
延長が可能な条件とは
・本採用する意向はほぼ固まっているが、確定まで少し時間が欲しい
などです。
研修期間と試用期間の労働条件
研修・試用期間中であっても、労働者が持っている権利は本採用と同じです。契約時に制限などを設定していない限り、給与・労働時間・休日などは試用期間前後で差異はありません。
試用期間中の雇用保険に関しても特別なルールはなく、本採用後と同様、週20時間以上の労働が見込まれる場合は加入できます。
ただし、給与に関しては、低く設定することが認められています。詳しくは次の項で説明します。
給与(給料)について
いずれも、会社の都合で時間的拘束をしている状態なので、 法律上は仕事をしているものとして取り扱われます。
よって研修期間も試用期間も給与の支払いが必要ですが、その期間の給与は通常よりも低く設定されている場合がほとんどです。
通常時の給与(=期間経過後の給与)より減額することは違法ではありませんが、面接や採用時に、具体的な金額等を明示する必要があります。
注意点としては、各都道府県の最低賃金を下回らないこと。
残業が発生した場合も、会社は残業代を必ず払わなければなりません。
まれに本採用前に研修を行うことがありますが、会社が参加を強制するものであれば、同じく給与が発生します。
しかし、本採用が決定する前の、参加・不参加を本人の意志に任せる参加自由型の研修については、会社命令ではないので、会社側は給与を支払う義務はありません。
解雇について
試用期間は業務を行うための知識や経験があることを前提にしており、本採用が前提ではありますが、適性がないと判断した場合は期間後に解雇の可能性があります。
ただし、本採用が前提なので、正当な理由がないのに一方的に解雇したり、試用期間終了後の本採用を拒否したりすることはできません。
もし、強行した場合は不当解雇と見なされる可能性が高いです。
試用期間中に解雇することは簡単ではありませんが、客観的に見て合理的と判断される事由があれば可能になることもあります。
例えば、
・遅刻や欠勤が多い
・提出された履歴書等の内容に関して重大な虚偽があった
試用期間中の解雇は、本採用後と比べると比較的許容されていますが、上記のような客観的に見て社会通念上、適切と考えられない場合以外の解雇は認められません。
なお、研修終了後や研修期間中でも途中解雇は可能です。
まとめると、よほどのことがない限り、研修期間や試用期間に解雇に至ることはないでしょう。
しかし、不誠実かつ不真面目な勤務態度の場合、解雇もやむを得ません。
「試用期間」においては、解雇の30日前までの予告、もしくは30日分以上の賃金の支払いが労働基準法で定められています。
試用期間と研修期間の違いについてお話させていただきました。
これらは混同されることが少なくありませんが、さまざまな点で違いがあります。
期間のことはもちろん、採用に対するスタンスなどが違うため、採用の際には基準などを明確に示し、説明するとよいでしょう。