from 西野浩輝

社内コミュニケーションの極意「カメレオン戦術」とは?

社内コミュニケーションは、ある側面では対社外コミュニケーションよりも難しいものです。

賛同いただける方も多いのではないでしょうか?

一方で、うまく働きかけ、巻き込むことで「組織全体の力」を活用することができ、大きなビジネスの成果に繋げていけるほどのパワーも秘めています。

今回は、周囲の人を動かし、自分のシナリオ通りに仕事を進めるための「カメレオン戦術」をご紹介したいと思います。

人によって態度を変えるのは悪いこと?

人によって、態度をコロコロ変える人がいます。

部下や弱い立場の人には横柄なのに、上司など立場が上の人には手の平を返したように、急にペコペコする。半沢直樹などのビジネス系ドラマや映画で、敵役の典型的なキャラとして描かれるイメージの人です。

正直、見ていて哀れだし、見苦しいですよね?

そういう人達にたくさん接してきたが故に、反面教師として以下のようなポリシーを貫こうとする人がいます。

「自分は人によって態度を変えたりしない。常に『あるがまま』の自分でいよう」と。

一見、立派な心構えのように見えます。

しかしながら、コミュニケーションの専門家としてズバリ申し上げます。

そのポリシーこそがプレゼン、コミュニケーションが上手くいかない大きな原因の1つになっています。

「あるがまま」がコミュニケーションにおける阻害要因の理由

なぜなのか?

たとえば、こういう状況を思い浮かべてみてください。

仮にあなたがあるプロジェクトのリーダーだとします。

メンバー達は相当のベテラン社員で、それぞれに強いこだわりがあり、一筋縄ではいかない癖のある人ばかり。しかも、そのこだわりや価値観がバラバラで、なかなか意見がまとまらず、リーダーとしていつも苦労している。

その状況下で全員に対して同じ接し方をしてもうまくいくでしょうか?

もちろん、Noですよね。

各メンバーのタイプや価値観、こだわりに合わせて、指示や説得の仕方、言わばコミュニケーションのストロークを大胆に変えないと、とてもじゃないが動いてくれないでしょう。

たとえば、リスクを取るのを非常に恐れる人には「リスクの少なさ」を強調して説明し、動いてもらう必要があります。

また、プライドが高いメンバーには「あなたこそが必要だ」ということを強調しつつ、こちらが望む動きを取ってもらう働きかけが必要です。

ところが私の指導経験上、驚くほど多くの人が相手に合わせて演じ分けていません。

「そのコミュニケーションの取り方だと、Aさんには通用するけど、Bさんに
は全く機能せず、動いてくれないよ」と思わせることが度々あります。

そして、その原因を探ってみると、どうやら「常に『あるがまま』の自分でいる」という考えが「人に応じて態度を変え、演じ分ける」という行動を阻害しているようなのです。

演じ分けることの意義

そう聞くと、こんな疑問を持つ人がいるかもしれません。

「じゃあ、西野さんは冒頭で言った『手の平返しの見苦しい人』になれと言うのか?」と。

もちろん、そうではありません。

では何が根本的に違うのでしょうか?

一言で言うと、「ベクトルがどこに向いているか?」です。

「手のひら返しの見苦しい人」はベクトルが「自分の出世」に向いています。完全に利己的な理由で、態度をコロコロ変えている。

一方、「演じ分けることで、人を動かせる人」は、ベクトルが「組織の成果」に向いているのです。

「どうすると組織の成果に繋がるか?」を深く考えた上で、利他的な理由で態度を変えているということ。

私はこれを次のような言葉で表現しています。

「利他的なカメレオンになろう」と。

カメレオンは、相手や周囲の状況に合わせて、大胆に色を変えてその場をうまく乗り切ります。まさに組織人たる者、カメレオンに学ぶべきでしょう。

なかなか周囲が動いてくれないと嘆く方にお伝えしたいこと。

「あるがままの自分で、正面からぶつかる」だけが正しいコミュニケーションの取り方ではありません。

ときには人によって、カメレオンのように態度や接し方を変幻自在に変えてみましょう。

組織の成果という大きな視点を持って、戦略的にコミュニケーションのストロークを使い分けてください。

自分のシナリオ通りに人が気持ちよく動いてくれて、成果が大きく向上することでしょう。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
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