部下はあなたにとって一番の〇〇
いきなりですが、質問です。
「部下はあなたにとって一番の〇〇」
この○○を埋めるとしたら、何を入れますか?別に2文字に限らなくてOKです。
ちなみに、これはリーダーシップ研修で私がよく聞く質問です。
あなたがもしメンバー職であれば、「自分がリーダー、マネジャーになったとしたら?」と想像して答えていただければと思います。
研修のなかではいろんな答えが出てきます。
「パートナー」、「ライバル」、「鏡」、「財産」あたりが多く出る例ですね。「武器」、「ツール」(笑)なんて答えもあります。
では、私の答えは何かというと、「お客さん」です。
ただし、お客さんだからと言って、「100%常に相手に迎合せよ、機嫌を取れ」と主張したいわけではありません。
お客さんは取引先に対して、究極的に何を望んでいるかを考えればわかると思います。
一番の望みは、「機嫌を取って欲しい」のではなく、「価値を出して欲しい」と思っているはずです。
その前提のもと、部下は上司にどんな価値を出して欲しいと思っているのでしょうか?
究極は、「自分の成果と成長のサポートをして欲しい」ということだと思います。ビジネスなんですから、よく考えたらそのはずです。
部下はお客さんという考えを持ったきっかけ
この「部下は自分にとって一番のお客さん」の考え方を私が持つようになったきっかけをお話しさせてください。
私がまだまだ若かりし20代の頃のエピソードです。
当時の私の上司Sさんはまさに「豪放磊落」という表現がぴったりの人で、言動も行動もかなり乱暴な人でした。部下には「アホ!ボケ!」を言いまくるし、終業後の飲み会は強要されるし、時には頭を叩いてさえいました。
まさにパワハラのオンパレード(笑)で、今ならば即刻「アウト!」です。
でもこのSさん、不思議なことに部下全員からとても敬愛されていたのです。
例に漏れず私もそのうちの1人でした。
あるとき、私がSさんと2人で飲んでいたときのこと。私は、つい酒の勢いに任せて冗談交じりにこう言っちゃったのです。
「Sさんって、豪快に見えて実際は部下のことを細かく見て、すごく気づかいされてますよね? 本当は豪快の真逆の性格じゃないですか?」と。
生意気なことを言った私に対して、Sさんはてっきり激怒しながら全否定するのかと予期していると、こう言い放ちました。
「その通りや! 当たり前やないか!」と。
そしてこう続けました。
「俺らマネジャーは、部下のおかげで飯が食えている。ということは部下はお客さんや。だから部下をよく見て、いろいろとフォローしながら最大限貢献することが俺ら上司の仕事なんや! 決まっとるやないか、ボケ!!」
と言いながら、私の頭をひっぱたきました(笑)。
その「乱暴な言動・行動」と「誠実な中身」の乖離に強烈な違和感を覚えながら、「さすがだな」「だからこんなに敬愛されるんだ」と思ったことは今でも鮮烈に覚えています。
そのとき、私はこう決めました。
「自分が上司になった時は、絶対この『部下はお客さん』の考え方を中心に据えてマネジメントしよう」と。
ただし、Sさんのようなパワハラ上司(当時はそんな言葉はありませんでしたが)にならないことも誓いましたが(笑)。
あれからもう数十年が経ちます。
「部下はお客さん」のコンセプトは、今の私のメンバーマネジメントにとって一番の指針になっています。
いわば絶対に軸がぶれることのない「北極星」のような存在です。
もちろん、私もまだまだ発展途上人です。
もっと良いマネジャーになるためにさらに尽力して、「(ソフトな)Sさん」のような人を目指して精進し続けたいと思っています。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。