マネジャーが持つメンバーへの不満と原因
「部下が自分の言うことを理解してくれない」
「何度も同じことを言わせる」
「『そんなの常識だろ?!』と思わず言いたくなる」
「言われる前に、率先して行動してくれないかな・・?」
マネジャーがメンバーに対して持つ、ありがちな不満です。
部下や後輩を指導する立場の方なら、多かれ少なかれ共感してもらえると思います。
結局のところ、これらの問題は上司ー部下間における価値観ギャップに起因する、認識や理解のズレから発生しています。
上記のような悩みを聞くことが、最近特に増えています。
なぜなのでしょうか?
一番の理由は、互いの価値観をすり合わせる時間が昔に比べて格段に少なくなったから。
1つの分かりやすい例が「飲みにケーション」をはじめとする、思いを語り合う場の激減です。
加えて、働き方改革の影響もあり、そもそもじっくり時間をかけてコミュニケーションを取ることが厳しい状況になっています。
その結果として、理解や認識のズレが容易に起こり得るのです。
価値観のギャップを解消する方法
ではどうすればこの問題を解決できるのでしょうか?
一番のお勧めは、チームの「クレド」を明文化し、全員で共有することです。
当然ながら、当社マーキュリッチでもクレドを明文化しており、「マーキュリッチ・スタンダード」という名称で運用しています。
スタンダードは「拠り所」という意味で、クレドとほぼ同じ意味です。
私自身、講師として様々な場所を飛び回っているため、部下と対面で話せるのは週に一回程度しかありません。
したがって、この「スタンダード」なしでは、マネジメントは無理と言っていいくらい必須のものになっています。
クレドの効果
「クレド」によるマネジメントが効果的である点は大きく2つあります。
まず第一に、この基準を元にメンバーと価値観が共有でき、互いのベクトルが合うようになること。
部下にフィードバックするときなど、ことあるごとにクレドに戻ることで、チームとしての「根幹の考え方」を刷り込むことができます。
そうすることで、マネジャーがいちいち細かい指示をしなくても、部下は大きく意図からズレることなく、適切な行動を取ってくれるようになります。
言わば適切な「自立」を促していけるということです。
さらに良いのが、このクレドを元に部下が自らハートに火をつけ、率先してアクションを取るようになる点です。
いわば、「自燃」と「自走」を実現できるのです。
クレドを用いた好例
その好例として、2010年のW杯サッカー日本代表のケースをご紹介しましょう。
当時の監督は、かの有名な岡田武史さん。
岡田監督は、チームを一枚岩にし、その結束力によって勝ち進んでいくために「6つのフィロソフィー」というクレドを作りました。
以下がそのフィロソフィーです。
Our team 俺たちのチーム
Do your best ベストを尽くせ
Concentration 集中しろ
Communication 意思疎通しろ
Improve 進歩しろ
チームをまとめ上げるため、この6つの中で特に大きな効果を発揮したのが「Our team」でした。
岡田監督が就任したとき、海外組と国内組の選手間で軋轢がありました。
それがゆえに、個々の力の総和を越えた「シナジー」を生み出す状況になかったと、岡田さんは言います。
そこで、彼はこの「Our team(俺たちのチーム)」の考え方を徹底して刷り込みました。
そうすることで、試合に出ていない選手も「『俺たちのチーム』のために、できることは何でもするんだ。水配りでも調整係でも、貢献できることは何でもやる」という気概をもって、率先して行動するようになっていったのです。
岡田さんは他の5項目に関しても、同様の浸透を図りました。
結果として、「6つのフィロソフィー」を大義名分にして、選手同士が互いに踏み込んで耳の痛いことも言い合いながら、自らの手で強いチームにしていきました。
まさに「クレド」を活用することで、選手の「自立・自燃・自走」を図り、ひいては、16強という偉業を成し遂げるに至ったわけです。
クレド作成と定着のポイント
クレドを作成する際の大事なポイントがあります。
それはメンバーを巻き込むこと。
それにより主体性が生まれ、積極的に実践しようという姿勢が醸成されます。
作成後は、クレドに沿って部下にフィードバックをしたり、部下本人から自分の行動を振り返らせたりすると、より定着が図れるでしょう。
シンプルなものでいいので、まずは作ってみてください。
その上で、運用しながら改善を加えていくと、メンバー各自がより「自立・自燃・自走」したくなるようなクレドに進化していきます。
ひいては、岡田ジャパンのような大きな成果を出していけるはずです。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。