英語力が低い≠英語プレゼンが下手
グローバル化が加速する中、英語によるプレゼンテーションの重要性は増すばかりです。
「昨日までは考えもしなかったのに、組織替えや方針変更で今日から急に必要になった」という人も少なくありません。
しかしながら、この英語プレゼンを苦手にしている日本人が多い。
というのも、やはり日本人には『英語』という大きな壁が立ちはだかるから。
「今のこの英語力でどうやって良いプレゼンができるというのか?」と感じてしまうのもよくわかります。
多くの場合、何とか頑張って英語力を上げようとするのですが、私自身の経験からも英語力自体はそう簡単には向上しません。
じゃあ、英語力が高くないと優れたプレゼンテーションはできないのか?
そうではないのです。
多くの日本人が持っている「英語が下手だから良いプレゼンテーションは無理」という認識は間違いであるという証拠としての事例をご紹介しましょう。
TOEICスコアは500点台がベストプレゼンター!?
私がある精密機器メーカーで英語プレゼン研修を実施したときのこと。
事前に聞いていた受講者の英語レベルは様々で、初級者から、ネイティブ(ニュージーランド人)まで、かなり幅がある状況でした。
その研修は数日間に渡って実施したこともあり、最終日にコンテスト形式にして、受講者同士でベストプレゼンターの投票をしてもらったのです。
そこですごく印象的なことが起こりました。
あるエンジニアの方(Hさん)が何と満票を獲得して、ベストプレゼンターに選ばれたのです。
Hさんの英語のレベル自体は決して高くなく、いわば中級程度。
事前の自己申告のTOEICスコアは500点台。なのに、そのプレゼンは、ネイティブを含めた全ての英語上級者を凌駕していたのです。
なぜHさんはそんなに優れたプレゼンができたでしょうか?
英語プレゼンの3つの注力ポイント
まず第一に、シナリオがよく練られており、ロジックが極めてわかりやすかったこと。
ついつい多くの人は、すぐパワーポイントに向かって資料を作成し始めたりします。
が、彼はそれをしなかった。
こちらが提供したフォーマットに沿って、筋道、構成を徹底的に時間をかけて考え、作りこんだ。
その上で、パワーポイント資料に落とし込んだから、上記のような見事なプレゼンになったのです。
2つめは、事前にリハーサルしまくったこと。
これはあとから聞いたことなのですが、Hさんは、30回以上「声に出して」練習をしたそうです。
そうすることで本番では、ある程度以上スムーズに言葉が口から出るようになり、余裕を持ってプレゼンすることができた。
それゆえ、当日はアドリブさえ出るほどのライブ感ある、魅力的なプレゼンテーションになったのです。
3つめは、堂々と自信ありげにプレゼンしていたこと。
日本人は謙虚な国民です。
ただし、それが高じて自信のない弱いプレゼンにもなりがちです。
それに関して、Hさんがプレゼン後に言っていたコメントが秀逸でした。
「自信はなかったけど、だからこそ敢えて自信ありげに振る舞おうとしました」と。
まさに本質をついた言葉です。
『自信がある』のと、『自信ありげに見せる』のは、似て非なるもの。
仮に自信がなくても、頑張って振る舞うことで、聴衆を少しでも安心させられるし、それこそが聞き手への貢献と考えるべきなのです。
Hさんは結局、英語力うんぬんの以前に、プレゼンそのものに力を注ぐことで、より良いものに仕立て上げることができたわけです。
今ある英語力を武器にプレゼン力を高める
私は常々、『英語プレゼン力=英語力×プレゼン力』であると言っています。指導経験上、そのウェイトは「英語力50:プレゼン力50」。
多くの日本人は、『英語力』にばかり意識が行き過ぎて、『プレゼン力』をおろそかにしすぎの傾向があります。
英語力はあった方がいいのは当然です。
ただし、もっと大事なのは『プレゼンテーション力』自体を磨くことなのです。
それをHさんが見事に体現してくれたわけです。
「とにかく英語力を上げなくては!」という呪縛から自らを解き放してあげることが、英語プレゼンテーションにおけるブレイクスルーを起こすコツなのです。
今回の記事では、英語力が英語プレゼンにおいてmustではない事を中心にお伝えしました。
そのほかにある【英語プレゼンにおける「よくある」誤解】をこちらに掲載していますので、お時間がある時にご覧ください。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。