日清紡マイクロデバイス株式会社様は、2022年1月、新日本無線株式会社とリコー電子デバイス株式会社との統合により誕生しました。

半導体製造を含む電子デバイス製品やマイクロ波製品を製造している会社として、音や光をはじめ、電流、温度、圧力、磁気など、フィジカル空間(現実空間)の物理データを電気信号に変え、サイバー空間(仮想空間)でそれらを「つなぐ」技術を持っていることを特徴としています。同社ではこの強みを活かして、あらゆる空間の情報や信号を「つなぐ技術(Connect Everything)」を磨くことで、超スマート社会の実現に向けた「アナログソリューションプロバイダ」を目指した事業活動を展開しています。

同社では2022年12月、一般社員を対象とした公募制のプレゼンテーション研修を実施。講師はマーキュリッチの西野浩輝が務めました。管理本部人事部高度専門課長の櫻田常幸様、小林美和様に、研修を実施したねらいや、当社が提供した研修内容についてどのような印象を持たれたかについて、お話を伺いました。

お客様の納得を引き出せるプレゼンテーション力を身につけてもらいたい

― まずは御社が今回、プレゼンテーション研修を企画された意図について伺わせてください。

櫻田様 当社は2022年に、新日本無線株式会社とリコー電子デバイス株式会社が統合して、新たなスタートを切った会社です。統合当初から目指していたのは、当社が有する技術力や知見、製品を通じて、お客様が抱えている課題に対するソリューションを提示できる会社になっていこうということでした。この考えに基づき、2023年に策定した方針(スローガン)では、「融合による変革、顧客提供価値の追求とソリューションビジネスの推進」を掲げています。

具体的にはどういうことかと言いますと、当社はこれまで電子デバイス分野などにおいて高い技術力を培ってきましたが、あくまでも求められる部品の提供に留まっていました。これを、お客様が抱えている課題をヒアリングし、当社が持つ複数の技術・製品を強化し組み合わせるなどで新たな価値を提供し、部品レベルに留まらずシステムレベルまでお客様と一緒に考え、解決していくこと目指しています。

これを実現するためには、まずは当社の社員一人ひとりが、自分たちの技術や考え、思いをわかりやすく伝え、お客様に理解・納得してもらうスキルを身につける必要があります。またお客様と対話を重ねる中から、お客様が抱えている課題を見つけ出し、最適なソリューションを提示できるようになることも求められます。

こうした力を社員一人ひとりに身につけてもらうために、不可欠であると判断したスキルの一つがプレゼンテーションスキルでした。当社の中には、自社の製品に対して愛着を抱き、強い思いを持って語れる社員は数多くいます。それに加えて、顧客目線に立ってプレゼンテーションをおこなう意識や能力を身につけてほしいと考えました。つまり「お客様の納得を引き出せるプレゼンテーション力を身につけてもらう」というのが、今回プレゼンテーション研修を実施することにした目的です。

小林様 プレゼンテーション力は、社内での社員同士のコミュニケーションにおいても重要だと考えました。例えば新日本無線出身の社員とリコー電子デバイスの出身の社員とでは、強みとしている技術分野などが若干異なります。そこで大切になるのが、社内における融合と言いますか、社員同士で「この技術とこの技術を結びつければ、こうした価値あるサービスが新たに提供できるのではないか」といったことを考え、提案し合える場面を増やしていくことです。その際には、自分の考えをきちんと伝えることができ、また相手が考えていることを受け止めたうえで、より良い提案ができるといったプレゼンテーション力が不可欠になります。

受講者の気持ちを高めてくれるフィードバック

― 研修会社にマーキュリッチを選ばれたのはなぜでしょう?

櫻田様 マーキュリッチさんが開催されていた研修企画者向けの無料の研修体験セミナーに参加したときに、西野さんのフィードバック力の高さに感銘を受けたのが一番の理由です。

体験セミナーでは、最初に研修の紹介・説明があり、後半ではセミナー参加者のうちの1名が模擬プレゼンテーションをおこない、その内容について西野さんがフィードバックをするということがおこなわれました。

一般的なプレゼンテーション研修の場合、講師が受講者におこなうフィードバックは、話の組み立て方や話し方、表情の作り方といったことにとどまるケースも少なくないのではないかと思います。

一方、西野さんはそうした点も押さえたうえで、「聞き手を動かしたいのであれば、全体の中でもこの部分をもっとこのように訴求したほうがいいですよ」といったように、コンテンツの中身まで深く入り込んだフィードバックをされていました。西野さんであれば、当社が求める「お客様の納得を引き出すプレゼンテーション力」を受講者が身につけられる研修をおこなってくれるのではないかと感じました。

小林様 もう一つ大きかったのは、西野さんが「日々のコミュニケーションのすべてがプレゼンである」という考えを打ち出していることでした。先ほども話しましたように、私たちは社外のお客様に対してだけでなく、社内の社員同士のコミュニケーションにおいても、プレゼンテーション力を発揮してほしいと思っています。その意味で「コミュニケーションのすべてがプレゼンテーションである」というのは、社員に対してとても良いメッセージになるのではないかと考えました。

プレゼンテーションをおこなう際に必要となる観点が否が応でも身につく

― マーキュリッチが提供した研修プログラムについては、どんな評価をされていますか。

小林様 非常に中身の濃い研修を実施してくださったと思います。

マーキュリッチさんの研修では、「フィードバックをすること自体が、きわめて重要なトレーニングである」という考え方を重視されています。

普通は模擬プレゼンでは、受講者は自分がプレゼンテーションをする番が終わるとほっとして集中力がとぎれるものですが、むしろそこから本番になります。5人前後のグループに分かれたうえで、ほかのメンバーがおこなったプレゼンテーションに対して、それぞれしっかりとフィードバックをしていかなくてはいけないからです。

フィードバックにあたっては、プレゼンテーションをどういう観点で分析すればいいかについてのシートが渡され、受講者はそのシートを参考にしながらコメントすることになります。ですからフィードバックを繰り返すうちに、受講者はプレゼンテーションをおこなう際に必要となる観点が否が応でも身についていくわけです。

研修では、模擬プレゼンを1人2回おこないました。受講者は自分自身がおこなったものも含めると、10回程度プレゼンテーションについて分析したことになります。相当な学びになったと思います。

櫻田様 受講者同士の相互フィードバックについては、正直私は「プレゼンテーションについての分析力が身についていない受講者同士でフィードバックをさせても、うまく機能しないのではないか」と心配していました。けれどもそれは杞憂に終わりました。

研修の中で西野さんご自身が、プレゼンテーションの“モデル”を示してくださったことが大きかったのかな、と思います。教えたことを、目の前で実践してくれたことにより、受講者にとってはどのようにプレゼンテーションをおこなえばよいかの基準ができ、分析力の向上にもつながったように思います。

また西野さんは、受講者がおこなったプレゼンテーションに対するフィードバックの仕方についても、やはり自身が“モデル”となって示してくださいました。受講者は西野さんの姿を見ながら、「こういうことに配慮しながら、そのプレゼンテーションの良かったところと改善点を指摘しなくてはいけないんだな」「このレベルまで細かい分析が求められているんだな」ということがつかめたと思います。

― 研修をオブザーブされていて、何か印象に残った場面はありましたか。

小林様 当社のプレゼンテーション研修の受講対象は、基本的には一般社員なのですが、今回は一人だけ管理職の社員が参加していました。その社員は研修の最後に実施された大きな演習の際に、自ら手を挙げて代表プレゼンターとして全員の前でプレゼンテーションをおこない、西野さんからのフィードバックを受けました。

その社員は、既にプレゼンテーションの経験が豊富にあり、ほかの受講者と比べてもやはり群を抜いたスキルを持っていました。プレゼンテーション後、西野さんはその社員自身に気づきを与えるような質問をいくつか投げかけ、その問いに社員が答えるといったやりとりがおこなわれたのですが、最後にその社員が「そうか、こうすればもっとよいプレゼンテーションになりますね」と言っていたのが印象的でした。

その社員は、受講後のアンケートに「この研修は、管理職層にも必須にすべきだ」と書いていました。西野さんは受講者のレベルに合わせて、どの層に対しても気づきをもたらすフィードバックができる方だと感じました。

ちなみに受講者全員を対象とした受講後のアンケートでは、理解度・有用度ともにほぼ満点に近い結果になりました。

― 最後に今後の人材育成の展望について教えてください。

これからの人材育成支援の方向性については、一人ひとりの成長への支援、社員の個性や強みを伸ばしていくことに力を注ぎたいと考えています。当社には「周囲を巻き込みながらプロジェクトを動かしていくのが得意である」とか「設計に関してはきわめて高い専門性を持っている」というように、その人ならでは個性や強みを持っている社員が数多くいます。そうした社員が、自分の個性や強みをさらに伸ばし、自ら考え行動できる自律型の人材になっていけば、それがその社員個人の成長のみならず、会社の持続的な成長発展にもつながっていくはずです。

そのために、私たち人事部門としては何ができるかを常に考え、研修も含めたさまざまな人材育成の支援策を社員に対して提供していきたいと思っています。

― 大変参考になるお話を伺えました。本日はどうもありがとうございました。

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※取材日時 2023年9月
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