ミカタ税理士法人様は、税務会計を軸としながら、企業経営から事業承継、経営者とその家族の資産形成まで、幅広いコンサルティングサービスを展開している税理士法人です。このたびミカタ税理士法人資産コンサルティング事業部様では、コンサルティング業務において必須となる提案力を向上させることを目的に、ライティング研修とロジカルシンキング研修を実施。研修講師は当社の西野浩輝が務めました。

研修を企画され、自らも受講者として研修に参加された執行役員CTO、資産コンサルティング事業部統括部長の土肥隆宏様と、資産コンサルティング事業部事業承継&相続対策関東地区部長兼北信越地区副部長の蒲生啓様に、研修を実施された狙いや、マーキュリッチが提供した研修内容に対する評価などについてお話を伺いました。

提案書の質の向上のために研修を実施することに

― まず御社の特徴と、組織内における資産コンサルティング事業部の業務内容について教えてください。

蒲生様 当社は税理士法人ですので、メインの事業は税務会計を中心とした会社経営のサポート業務です。ただし税務会計のみならず、経営者様やそのご家族様の資産形成や事業承継等に関するソリューションについても提供しています。経営者様の会社経営やライフプランをトータルにサポートできる組織体制を組んでいるのが、当社の特徴といえます。そうした中で資産コンサルティング事業部では、主に経営者様に対する株式承継や相続対策、資本政策などのコンサルティング業務を担っています。

― 今回、資産コンサルティング事業部で、ライティング研修とロジカルシンキング研修を実施することにされた目的は何でしょうか。

蒲生様 私たちが提供しているのは、無形商材です。有形商材とは異なり、その価値や内容をお客様に目に見えるかたちで示すことが大変難しい商品です。さらには多くの経営者様にとって、株式承継や相続対策は初めての経験です。

ですから資産コンサルティング事業部の社員は、当社が提供するサービスを利用すると、会社やご自身・ご家族の将来がどのように改善・発展するのか、論理的にわかりやすく、具体的にイメージできるご提案をお客様に行えることが重要になります。得てして提案は、株式承継や相続時の節税対策などの数字を羅列した“つまらない提案”に陥ってしまいがちなものですが、これでは競合他社も存在している中で、当社を選んでいただくことはできません。

お客様に対するご提案は、提案書を通して行います。そこでまず提案書の質を高めることを目的に、ライティング研修を実施することにしました。そのうえで提案内容を組み立てる際に必要不可欠となる論理的思考力についても同時に強化したいと考え、ロジカルシンキング研修の実施も決めました。

土肥様 これまで社員は、過去にほかの社員が作成した提案書を参考にしながら、提案書作成に取り組んでいました。しかし、そうした前例踏襲型の提案資料が、無形商材をご提案する際の定型的なセオリーを本当に満たしているのかどうか……。実際に契約が成立していることもあり、一定の効果は出ていたものの、これで良いのかという疑問は常にありました。そこでライティング研修の実施によって、提案書作成についての体系的な知識・スキルを社員に身につけさせたいという狙いもありました。

またロジカルシンキング研修を実施することにしたのは、お客様の状況やニーズを無視した“押しつけの提案”ではない提案ができる力を、社員に身につけさせたいという思いもありました。お客様のことをきめ細かく分析したうえで、顧客視点で提案内容を組み立てられるためには、論理的思考力が不可欠となりますからね。

「実践」と「フィードバック」の繰り返しによりスキルが定着

― マーキュリッチを研修会社に選定した理由についてお聞かせください。

蒲生様 ライティングやロジカルシンキングにおいて求められるスキルや考え方が、着実に身につく研修であると判断したからです。

マーキュリッチさんの研修は、「実践」と「フィードバック」のサイクルを回しながら進めていくことを特徴としています。ライティング研修でいえば、まずライティングや提案書作成の基本的な考え方を講義形式で学びます。そのうえで受講者一人ひとりが、自身が作成した提案書を用いたプレゼンテーションをほかの受講者の前で行い、良い点と改善点についてのフィードバックを受けます。そのフィードバックによって得られた気づきをもとに提案書を改善し、ほかの受講者の前でまたプレゼンを行う。この繰り返しによって、学んだスキルや考え方が確実に受講者自身の中に定着していきます。

私自身、過去に他テーマの研修を受講したときの経験から、一方的な講義形式の研修ではなく、実践やフィードバックを重視した研修のほうがスキルが定着しやすいことを実感していましたから、マーキュリッチさんにお願いしようと思いました。

土肥様 講師を担当してくださった西野さん自身が、マーキュリッチの代表取締役を務めていることも決め手の大きな一つとなりました。西野さん自身も普段は経営者として、税理士をはじめとしたさまざまなビジネスパーソンから説明や提案を受ける場面が数多くあると聞きました。その経営者の立場から、「この提案では経営者層には響かない」「ここが伝わりにくい」といったアドバイスをもらえることは、大きな価値がありました。

また、事前に当社の業務内容を理解したうえで、実態に合わせた研修プログラムを提案いただきました。ライティング研修では、実際の業務用に社員が作成した提案書を素材に用いながら研修を行うことになりました。画一的なプログラムではなく、柔軟な対応をしてくれる点も魅力的でした。

資産コンサルティング事業部には約20名の社員がいますが、研修はその中でも提案書を作成する機会の多い約10名に受講してもらうことにしました。また他部署の社員にも参加を呼びかけましたので、全部で13名前後での受講となりました。私と蒲生も、一受講者として参加しました。

学んだことを現場ですぐに実践できた

― マーキュリッチが提供した研修の内容については、どう評価されていますか。

土肥様 今回、ライティング研修は1日7時間×2日間の終日研修と半日4時間の研修で計2.5日間、ロジカルシンキング研修は計1日7時間研修を2日間実施したのですが、マーキュリッチさんからの提案を受けて、各研修の1日目や2日目(3日目)の間には2週間程度の間隔を設けることになりました。これが非常に効果的でした。

と言いますのは、その研修で学んだことを、次の研修が行われるまでの間に現場の実務で実践できるからです。すると実践の中で得られた手応えや課題を持って、次の研修に臨むことができます。さらには先ほど蒲生が述べたように、研修自体も実践とフィードバックを重視した内容になっています。この実践重視の研修により、学んだ内容を実務に即して身につけることができ、提案力の向上につながっていきました。

蒲生様 私はライティング研修を受けているときには、学んだことをすぐに提案書の作成に反映させるようにしていました。例えば講義の中で印象的だったアドバイスの一つに、「提案書は簡潔に書かないと、お客様に響かない」ということがありました。私を含めて多くの社員は情報の抜け漏れを恐れて、提案書の情報を詰め込みがちです。しかしそれではお客様に伝わらないと気づき、研修の翌日には、提出直前だった提案書を大幅に書き直しました。「研修」と「実務」が連動していたことで、研修期間中も自身の提案書作成能力がアップデートされていくのを実感することができました。

講義の中では、文章構成における「サンドイッチフォーマット」の話も印象的でした。提案の要点を最初に示し、次に詳細な説明を行い、最後にもう一度要点を示す――という構成の重要性を教えていただきました。最初はやや冗長に感じたのですが、これくらい丁寧に説明を重ねないと、相手に内容が十分に伝わらないことを認識しました。

土肥様 私がライティング研修で特に印象に残っているのは、提案書におけるメインメッセージの重要性を改めて認識できたことです。提案書作成の際には、まず「お客様に何を伝えたいのか」というメッセージを明確化すること。そのうえで、メインメッセージが最後までしっかりと一貫している提案書になっているかを提案書作成後に確認すること。もしズレがあれば、メインメッセージ自体を内容に合わせて見直すことも必要だと学びました。私自身、これまでもメインメッセージを意識して提案書を作成してきましたが、研修でその重要性が整理されて示されたことで、自分のやり方が間違っていなかったという確信が持てました。

またロジカルシンキング研修では、受講者の多くが概念の整理の重要性に気づくことができたと思います。例えばこれまで社員の中には、経営者様に所得税や法人税といった税金のしくみについて説明をする際に、「後継者についての不安」や「従業員への配慮」といった心理面の話題を混在させながら話してしまうといったことが、しばしば見られました。聴き手を混乱させないためには、頭の中で概念を整理したうえで話すこと、また異なる概念を扱う際は「話が少し変わりますが……」といった前振りを入れることの大切さを学ぶことができました。

「フィードバックしあうカルチャー」が組織に根づく

― 研修終了後、資産コンサルティング事業部の組織やメンバーに何か変化は見られましたか。

土肥様 ロジカルシンキングを体系的に学んだことにより、商談の際に「整理して話す力」とともに、「整理しながら聞く力」も高まったと感じています。お客様の中には、ご自身や会社の現状、課題、将来に対して、強い思いは持っていても、明確に言語化できていない方もいらっしゃいます。そこでお客様の話をロジカルに整理して聞きながら、「これはこういうことですね」と確認してあげると、「そうそう。あなたは私の言いいたいことをよくわかっていますね」という反応が返ってきます。多くの社員がロジカルシンキングを身につけたことで、お客様からの信頼が得られやすくなりました。

蒲生様 私が感じるもっとも大きな変化は、「フィードバックしあうカルチャー」が組織内で定着したことです。もちろんこれまでも若手社員が作成した提案書を上司や先輩社員がフィードバックしていましたが、今では若手社員同士の間でも、研修で学んだことをもとに、「この提案書にはこういう観点が抜けているから、入れたほうがいい」「この部分は冗長になっているから削ったほうがいい」といったやりとりが自然に交わされるようになっています。

また商談の目的に応じて、提案書の内容を書き分けられるようにもなりました。例えば初回の商談では、いきなり細かい内容まで書き込むのではなく、全体像を簡潔に提示するにとどめ、より詳細な提案書は実行フェーズになってからお客様に示す。これにより最初から分厚い提案書を作成する手間が省け、かつ、お客様のご要望や状況に応じて内容を柔軟に調整できるようになり、業務の効率化と提案品質の向上につながりました。

― 最後に、今後の研修計画について教えてください。

蒲生様 次のステップとしてプレゼンテーション研修を計画しています。お客様に対してより説得力のある提案を行うためには、社員が論理的思考力を身につけ、質の高い提案書を作成できる能力を備えていることに加えて、プレゼン力も不可欠です。この3つの力を総合的に高めていくことが重要であると考えています。

また、ライティング研修やロジカルシンキング研修とはタイプが異なる研修になりますが、ミドル層を対象としたマネジメント研修も検討しています。現場から管理職に登用された社員が、マネージャの役割や心構えを体系的に学べる場を提供したいと思います。

― 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。貴重なお話を伺うことができました。

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※取材日時 2025年1月
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