AT&S様はオーストリアに本社を構えるグローバル企業であり、プリント基板の製造・販売を事業の柱としています。従業員数は全世界で約1万5000人、売上高は約15億5000万ユーロに達します。同社ではこのたびアジアパシフィック地域の営業メンバー17名を対象に、マーキュリッチが提供する「多国籍企業向けプレゼンテーション研修」を実施されました。なお研修講師は当社の西野浩輝が務め、受講者が多国籍であったことから研修は英語を用いて行われました。

研修を企画・運営されたAT&Sジャパン代表取締役兼ダイレクター リージョナルセールス アジアパシフィックの豊田公太様に、研修を実施することにした背景や狙い、研修会社にマーキュリッチを選んだ理由、研修によって得られた成果などについてお話を伺いました。

メンバー間のプレゼンスキルのばらつきを解消したかった

― 御社では2024年3月に、アジアパシフィック地域の営業担当者を対象に、プレゼンテーション研修を2日間にわたって実施されました。まずはアジアパシフィック地域の位置づけと、今回の受講者について教えてください。

豊田様 当社はセールスリージョンをアメリカ、ヨーロッパ、グレーターチャイナ、アジアパシフィックの4地域に分けており、このうちアジアパシフィック地域については、東京やインドのベンガルールなどに営業拠点を設けています。今回の研修は、アジアパシフィック地域の各営業拠点より営業担当者や技術営業担当者計17名が参加し、東京で実施されたものです。受講者の出身国・地域は、日本、韓国、台湾、インド、イタリア、オーストリアなど多岐に渡っていたため、研修は英語で行いました。

― 今回、この研修を企画された狙いを教えてください。

豊田様 メンバー間のプレゼンスキルのばらつきを解消し、標準化を図ることが一番の目的でした。

プレゼン時のスピーチにせよ、プレゼン資料の作成にせよ、メンバーの中には内容が情報過多になっていたり、要点が絞られていなかったりするために、こちらが訴求したいメッセージを的確かつ効果的に聴き手に伝えることができていないケースがしばしば見受けられました。そこで要点を簡潔に整理したうえで、話を組み立て、発信できるスキルを身につけさせたいと考えました。

特にグローバルな場面で英語を用いて行われるプレゼンの場合、聴き手もノンネイティブであるケースが少なくありません。こうした場面では、聴き手にストレスを与えないために、本質をしっかりと捉えたうえで、簡潔な話し方をすることがことのほか大切になってくるといえます。また簡潔に話すことは、社外プレゼンのときだけでなく、社内のほかの部署のメンバーにこちらの要望を伝え、納得したうえで動いてもらう必要があるときなどにも重要になります。

さらに今回の研修では、「聞くこと」への意識を高めたいという思いもありました。当社ではPain Pointという言葉をよく使うのですが、お客様が最も「痛み」を感じている部分を把握したうえで、その痛みを取り除けるソリューションを提示できないと、成約を勝ち取ることは困難になります。「痛み」を把握するためには、商談などの際に背景にある事情や本音の部分まで含めて、お客様からどこまで深く話を引き出せるかがカギとなります。これができて初めて、お客様の心を動かし、決断へと導いていくプレゼンを行うことが可能になります。

ですから今回講師を務めていただいたマーキュリッチの西野さんには、研修を実施するにあたって、「聞くこと」への意識づけやヒアリングを行う際のポイントについても、研修プログラムの中に盛り込んでほしいとお願いしました。

体系的かつ受講者が習得しやすいメソッドを提示してくれる研修だと感じた

― マーキュリッチを研修会社に選ばれた理由は何だったのでしょうか?

豊田様 アジアパシフィック地域としてプレゼンテーション研修を実施したのは今回が初めてでしたが、日本法人単体としては以前にも何度かプレゼンテーション研修やヒアリング研修などを実施したことがあり、その際もマーキュリッチの西野さんに講師を務めていただきました。

マーキュリッチさんのプレゼンテーション研修の特長として、プレゼンの考え方や構成の仕方などを体系的に教えてくださるとともに、誰にでもわかりやすく、受講者が比較的すぐに習得できるプレゼンの手法を示してくれることが挙げられます。以前実施した研修の中でも、プレゼンを「イントロ-ボディ-エンディング」の3部構成で行う「サンドイッチフォーマット」や、1つのテーマを3つのポイントに分けて説明すると聴き手の納得度が高まるといった「マジックナンバー3の法則」などを示してくださいました。

こうした手法に則れば、こちらが伝えたいメッセージを簡潔かつロジカルに聴き手に発信するプレゼンを行うことが可能になります。これこそアジアパシフィック地域のメンバーにまさに身につけてほしいと考えていたスキルでしたので、今回も是非マーキュリッチさんにお願いしたいと思ったのです。

また西野さんは、英語プレゼンテーション研修の講師を務めているなど、英語力も非常に高いレベルにあります。多国籍の受講者を対象にしたプレゼン研修を担当した経験もお持ちだと伺っていました。さらに西野さんがYouTubeで公開されている英語プレゼンの動画についても事前に拝見したうえで、「英語コミュニケーション力という点でも、西野さんであれば安心してお任せすることができる。これは西野さん一択だな」と判断しました

1日目と2日目とでは、受講者の様子に大きな変化が見られた

― 今回の研修の内容については、どのような評価をされていますか。

豊田様 以前もそうでしたが、今回の研修も座学だけでなく、演習を中心とした実践的な内容でした。まず受講者には、事前課題としてプレゼン資料を作成することが課されました。

そして研修当日は17名の受講者を5班に分けたうえで、メンバーが持ち回りでほかのメンバーの前でプレゼンを行うということが繰り返されました。また1人のプレゼンが終わるたびに、ほかの受講者はそのプレゼンの良い点や改善点についてのフィードバックを行うことも求められました。受講者は自分がプレゼンをしていない場面でも緊張感を持って仲間のプレゼンを聞かなくてはいけなくなるため、少しも気を抜くことができず内容の濃い研修になったと思います。

フィードバックをする際の観点や注意点については、事前に西野さんからレクチャーを受けていました。また西野さんは各班のテーブルを回りながら、受講者が気がついていない観点からフィードバックをしてくださっていました。受講者は西野さんのコメントを参考にしながらフィードバックを繰り返す中で、自ずと他者のプレゼンを客観的に分析する力が養われていったと思います。そしてこの分析力は、自身のプレゼンを改善する際にも役立てられるはずです

― 今回の研修は2日間に渡っての実施となりましたが、この2日間の中でも受講者の変化を感じられたところはありましたか。

豊田様 はい、感じました。最初に受講者が事前課題として作ってきたプレゼン資料は、情報過多になっているものが目立ちましたし、プレゼン自体も当初は5分の制限時間内で終わらせることができない受講者がほとんどでした。しかしDay1の研修で、簡潔かつロジカルにプレゼンを行うことの重要性と、「サンドイッチフォーマット」等の手法を学んだことは、受講者にとって大きな意味を持ったようです。

Day1の終了後、受講者には「研修で学んだことを踏まえて、プレゼン資料やプレゼンの構成を見直す」という宿題が課されました。するとDay2当日に彼らが直してきたプレゼンの資料はいずれもシンプルで見やすいものとなっており、プレゼン自体もメッセージが明確で聴き手に伝わりやすい内容になっていたのです。受講者はDay1が終わったあとに研修で学んだ内容を振り返り、自分なりに消化したうえで、翌日のプレゼンに臨んだということだと思います。当社の場合はもともと1日で研修を終わらせるようなことはないのですが、今回も研修期間を2日にしたことで、より深い学びを実現することができました

― 講師を務めた西野について、何かほかに印象に残っていることはありますか。

豊田様 受講者の中には、必ずしも英語が得意ではない者もいました。西野さんはそうした受講者に対しては、「大丈夫ですよ、ゆっくり話してください」「今の言葉は、こういうことですかね?」といったフォローをその都度してくださっていました。おかげで英語に自信がない受講者も、安心感を抱きながら研修を受けることができたと思います。

「サンドイッチフォーマット」と「マジックナンバー3」が合言葉になった

― 研修受講後、アジアパシフィック地域の営業チーム全体の雰囲気や一人ひとり受講者には、受講前と比べて何か変化は見られますか。

豊田様 もっとも大きな変化は、「サンドイッチフォーマット」や「マジックナンバー3」が、アジアパシフィック地域の営業チームの共通語になったことです。研修が終了した直後に受講者全員で飲み会を開催したのですが、そのときもその場で発言しようとしていたあるメンバーに対して、ほかのメンバーから「サンドイッチフォーマットでまとめてくださいね」といった言葉がかけられていました(笑)。

「サンドイッチフォーマット」は、簡潔でロジカルで、メッセージが聴き手に届くプレゼンにするためには、プレゼンをどのように組み立てればいいかを端的な言葉で表現したものです。なおかつ印象に残りやすいキャッチーな表現でもあるところも秀逸です。研修後、日本法人ではメンバーがお客様先に商談に向かう際などには、「サンドイッチフォーマットとマジックナンバー3を意識して!」が合言葉になっています。

一方日本法人以外のメンバーについては、いまだにプレゼンや報告が冗長になりやすい傾向の社員も見られます。学んだことはその場では習得したつもりでも、一朝一夕には身につかないということなのでしょう。そのたびに私は「サンドイッチフォーマットとマジックナンバー3を思い出して!」と声をかけています。これを繰り返すことによってしか、メンバーの成長はないと考えています。

― 最後にアジアパシフィック地域における今後の研修計画を教えてください。

豊田様 具体的なことはまだ未定ですし、次回はヒアリング研修などプレゼンテーション研修以外の研修になるかもしれませんが、是非また実施したいと考えています。マーキュリッチさんには、その際にもよろしくお願いいたします。

― こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

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※取材日時 2024年5月
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