ストーリー形式でメッセージを伝えることで、相手を話に引き込み、強く印象付ける手法のことを「ストーリーテリング(story telling)」といいます。
社外の顧客向けマーケティングや広報、そして社内向けの人材教育など、幅広い場面でストーリーテリングは活用されています。
とはいえ、「なぜストーリーを使わなくてはいけないのか?」という点が腑に落ちなければ、本当の意味でストーリーテリングを活用することは難しいでしょう。
社外向けと社内向けそれぞれ具体的な事例を上げながら、なぜストーリーを使うべきなのか、その意味についてまとめました。
ストーリーテリングの活用法:社外の顧客に対して使う意味
ストーリーテリングの手法を社外の顧客向けに使う場面としては、たとえば以下のようなシチュエーションが考えられます。
- 商品・サービスのプレゼンテーションや企画提案
- 社外向けのウェビナーやセミナー
- 人材採用の場での自社や社員紹介
- テレビCMなどのマス・マーケティング
- インスタグラムなどのSNSマーケティング
ストーリーテリングの成功事例は枚挙にいとまがありませんが、代表的なものをいくつかご紹介します。
ストーリーテリングの成功事例1:画期的なApple製品のプレゼンテーション
プレゼンテーションの天才と呼ばれたスティーブ・ジョブズは、画期的な製品を世に出す際、必ずストーリーテリングの手法を採用していました。
たとえば初代iPodの時には「1,000曲をポケットに」というコンセプトのもとストーリーを語り、iPhoneを世に出した際は「電話を再発明する」のメッセージをストーリーを通じて聞き手に届けています。
こうして革新的すぎて理解されづらいプロダクトだったにも関わらず、あっという間にユーザーの心をつかみとったのです。
ストーリーテリングの成功事例2:テレビショッピング
身近な例でいえば、テレビショッピングでもストーリーテリングの手法が非常によく用いられています。
たとえばビデオカメラを販売するにしても、画素数などの機能説明よりも「孫が運動会で1位になる瞬間を逃さず、思い出を記録できるように」というようなストーリーを入れることでシニア層の顧客をつかんでいるわけです。
ストーリーテリングを使えば、商品の利用シーンをイメージさせ、それによって得られる感情的なメリットなどを強く印象付けることで、行動を起こさせることができます。B to Cだけではなく、B to Bでのセールスにも有効な手法です。
ストーリーテリングの活用法:社内の教育・広報に使う意味
ストーリーテリングの手法を社内向けに使う場合は、会社の理念やビジョンを組織に浸透させ、社員のエンゲージメントを高める目的で活用されることが多いようです。
会社の理念やビジョンが社内に浸透すると、企業の成長速度が加速します。また、経営陣と社員の方向性がすり合わせしやすくなるため、組織としての足並みがそろいやすくなるでしょう。社員のエンゲージメントが高まれば、自主的な行動が増え、結果的に生産性の向上や離職率の減少が期待できます。
そのため様々な企業が、自社内で理念やビジョンを浸透させようとしていますが、HR総合調査研究所の「企業理念浸透に関するアンケート調査」によると、理念の浸透ができている企業は過半数にも満たないことが分かります。
その大きな原因の一つとして、経営理念の意味やビジョン策定の背景が社員に理解されていないという点が挙げられます。
こうした課題を解決するために、最近注目されているのがストーリーテリングの手法を用いた教育・広報です。
社内でストーリーテリングを使う具体的な場面とは
社内報などの内部向けメディアを展開している会社では、活躍している社員にインタビューを行ったものを記事化し、全社員に公開することで、自社の組織や企業ブランドに愛着を持ってもらうための試みがよく行われています。
また内定が決まった社員に会社の創業ストーリーを伝えたり、新入社員に社長が「なぜこの会社ができたのか?」「この会社はどこに向かって歩んでいるのか」を語ったりするケースもあるでしょう。これらの社員向け教育の場面でもよくストーリーが用いられています。
これらの例だけ見ると、会社の経営陣や人事担当者、広報担当者にしか関係のない話なのかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
より身近な例でいえば、以下のような社内コミュニケーションの現場でもストーリーテリングはその威力を発揮します。
- 手間がかかる頼みごとをする際に、なぜその仕事が重要なのかを伝え、優先的に対応してもらえるようにする
- プロジェクトを立ち上げる際に、プロジェクトの背景や重要性をリーダーがプレゼンすることで、他のメンバーに主体的に動いてもらえるようにする
このようにやや難度が高い社内コミュニケーションの場面でもストーリーテリングは活用可能です。
社内コミュニケ―ションでストーリーが発揮する効果とは
ストーリーテリングの導入効果は、大きく分けて3つあります。
- 共感が高まる
- 記憶への定着度が増す
- 動機付けにつながる
詳しくは、「ストーリーテリングとは何か?」という記事で詳しく説明していますが、社内の理念やビジョンの浸透は、まさに「共感を高める」効果や「動機付け」の効果を活用したものといえるでしょう。
また、ストーリーテリングを活用できる人が組織内に増えていくと「社内コミュニケーションが潤滑に進みやすい」というメリットもあります。
なぜなら、ストーリーを上手に使える人は周囲から「話が分かる人」「話していて楽しい人」という印象を持たれやすく、相手に好感を持たれやすいからです。
そのため、ストーリーテリングを身につけておけば、個人としての人間関係も充実しやすく、かつ組織としてもよりコミュニケーションを活性化できるのです。
そういった意味でも、ストーリーテリングは会社員にとってぜひ身につけたいスキルといえるでしょう。
まとめ
社内外の様々な場面で使える「ストーリーテリング」は、知識だけではなく実践で使いこなすことができれば大きな武器になるコミュニケーションスキルです。
社外向けのプレゼンテーションや営業が苦手な人、あるいは社内のコミュニケーションに不安を抱えている人は、身につけておいて損はありません。
別記事でストーリーテリングについて学べる書籍についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
また、ストーリーテリングを実践的に学べる研修やセミナーなどがあれば、ぜひ参加してみることをおすすめします。