伝わるプレゼン構成『サンドイッチ法』とは
当記事では主に、「効果的で、使いやすい」シナリオ構成の仕方を紹介します。
その大前提として、まず押さえるべきはプレゼンの目的です。
プレゼンテーションを行う目的
プレゼンテーションの語源は、「プレゼント」です。
つまりプレゼンテーションとは、話すという行為を通じて、聞き手に対して価値ある情報を「プレゼント」すること。そうすることで、聞き手に喜んでもらったり、動きたい気持ちになってもらう。
その上で最終的に、話し手も聞き手もハッピーな方向に導くのが、プレゼンテーションの目的です。
そのための絶対条件は、聞き手に価値ある情報がしっかり「伝わる」こと。難解で、伝わりにくい話が、良いプレゼントのはずがありません。
伝わるプレゼンとは
では、「伝わるプレゼン」とはどういうものでしょうか?
主には以下の3条件を満たしていることです。
メッセージがはっきりしている
聞いていて、「いろいろ言われたけど、結局何がいいたいの?」と思わせるプレゼンテーションは少なくありません。
それを避けるために、プレゼンの「全体におけるメインメッセージ」と、「各パートにおけるサブメッセージ」を明確に表現しましょう。
ロジックがはっきりしている
「なぜその結論になるの?」
「この話は前とどうつながっているの?」
「全体の中でのどういう位置づけで話している?」
「話がよく見えないんだけど・・・」
と感じると、聞き手はどんどん迷子になっていき、結局伝わるプレゼンになりません。
そうならないためにも、しっかりとロジックを組み立てる必要があります。
内容が平易で簡潔
聞き手が知らないであろう専門用語はできるだけ避けるのが得策です。仮に使ったとしても、その後に必ず平易な言葉で補足するようにしましょう。
また、裏付けをしっかり伝えようとしすぎて、あまりにも細かく、たくさんの情報を詰め込むのもよくありません。
裏付けとなるデータやスペック説明に関しては、本当に大事なものだけプレゼン資料に記載します。
その上で、さらなる詳細情報は添付資料につけるか、質疑応答用に手元に用意しておくのが適切です。
構成とは話の流れを決めるもの
プレゼンテーション研修における受講者の発表を聞いていて、「どうも分かりにくいな」と感じたときに、「どういうプロセスで資料を作ったか?」を聞くことがあります。
大概の場合、「いきなりパワーポイント作成に入った」という答えが返ってきます。
つまり、構成や組み立てをしっかり考えずにいきなり詳細の資料作成に入ってしまっているため、話のロジックや流れが分かりにくくなっているのです。
構成とは、ずばり「話の流れを決めるもの」です。
聞き手は流れや繋がりを理解しながら詳細を聞くと、内容にしっかり付いていくことができ、納得・腹落ちするようになります。ひいては、話し手が持って行きたい方向に行動化してくれるようになります。
とても大切なので、再度繰り返します。
プレゼンテーションは詳細も大事ですが、より重要なのは構成です。ある程度しっかり構成を考えた上で、資料作成に入るようにしましょう。
伝わるプレゼン構成『サンドイッチ法』
では、どんな構成のやり方があるのでしょうか?
以下に、効果的で応用しやすい構成フォーマットをご紹介します。
ビジネスプレゼンにおいて、圧倒的におすすめなのが、以下に紹介する「サンドイッチ法」です。
当社が20年間、100,000人を越えるビジネスパーソンに対しての指導経験を通じて効果を実感している黄金のフォーマットと言っていいものです。
先ほどお伝えした「伝わるプレゼンの3条件(メッセージ、ロジック、簡潔)」を自動的に満たしてくれるのはもちろんのこと、説得型プレゼンにも情報伝達型プレゼンにも、そのまま使える万能の型です。
「構成で迷ったら、まずはサンドイッチフォーマット」
こう覚えていただいて間違いないでしょう。
サンドイッチフォーマットは、基本的に「イントロ(序論)-ボディ(本論)-エンディング(締め)」の3部構成から成り立っています。
では、それぞれのパートをどう具体的に展開すればいいかを説明していきます。
イントロ(序論)2つの役割
イントロの役割の1つめは、聞き手に全体像を示すことです。
ダラダラとした前置きは省いて、「本日は新商品である○○の概要をご説明します」といった風に、シンプルに「話す領域」を示しましょう。
その上で、プレゼンの大まかな流れ・全体像を簡単に述べます。
そうすることで、その後の話の道筋が見え、分かりやすくなるだけでなく、聞き手が安心してプレゼンを聞くことができます。
2つめの役割は、聞き手の興味・関心を呼び起こすことです。
一番の王道は、聞き手が持っているであろう問題・課題を提示すること。
「皆さんは日常で○○といった悩みをお持ちではないでしょうか?」といった感じで斬り込むことで、聞き手の頭の中にその問題を呼び起こさせ、かつ解決策を期待する聞き手のハートを掴みやすくなります。
イントロでは事例語りも効果的です。他社の成功事例を紹介することで、聞き手に「ウチにも適用できそうだ」と前のめりにさせたり、失敗事例を提示することで、危機感を煽りやすくなります。
また、ちょっと意外なデータを示すことで、聞き手の興味・関心を引くというツカミのテクニックも有効です。
このように、イントロで聞き手に「安心感」と「興味関心」を持ってもらった上で、次のボディ(本論)のパートに繋げていきます。
ボディ(本論)の組み立て方
このボディパートは、プレゼンテーションの根幹を成すものです。大きくは、「メインメッセ―ジ」と「サブパート」から構成されます。
例えば、自社の魅力を学生に伝えるプレゼン場面だとした場合の例は以下のようになります。
サブパートの1つめのポイント : 仕事のやりがいが大きい
サブパートの2つめのポイント : 成長できる環境が整っている
サブパートの3つめのポイント : ベースとなる安定がある
ここで示したように、サブパートは、3つのポイントでまとめるのがお勧めです。
というのも、「人間は1つの概念(=メインメッセージ)を3つのポイントで補足されると最も納得度が高い」と言われる『マジックナンバー3の法則』に則っているからです。
3つのサブパートのポイントが決まったら、それぞれのポイントの詳細を埋めていきましょう。
上記の例で言うと、1つめのポイントである「仕事のやりがいが大きい」に関して、その根拠を理屈で説明したり、実際にやりがいを持って仕事に取り組んでいる現社員のエピソードを交えたりして話すと、納得・腹落させるプレゼンに発展させていくことできます。
「3つのサブパート」それぞれにおいて詳細説明を行った上で、最後の「エンディング」パートに繋げます。
エンディング(締め)の持っていき方
エンディングにもやはり役割が大きく2つあります。
1つめの役割は、聞き手の頭に重要ポイントを再度刷り込むことです。そのために、プレゼンの重要ポイントを繰り返しましょう。
多くの場合は、「メインメッセージ」と「3つのポイント」です。
全て言うと長い場合は、キーワードを中心にサマリー(要約)して伝えます。
先ほどの「自社の魅力を学生に伝えるプレゼン」場合、以下のようになります。
「ここで再度大事なことを確認させていただきます。当社は、やりがい・成長・安定という観点からあなたの自己実現を可能にする会社です!」というくらいの長さがリズムも良く、聞き手の頭に入りやすい長さでしょう。
エンディングのもう1つの役割は、聞き手の行動促進を図るというもの。
例えば、導入検討のためのプロセスを示したり、ファーストステップを紹介するのが典型的です。
このパートはプレゼンの最後なので、少し大風呂敷を広げても許されるモードになっています。「この提案を採用いただき、継続することによる数年後の夢の世界」を描くのも締めにはふさわしい内容です。
『サンドイッチ法』以外の構成の型
以下にそれ上記でご紹介した「サンドイッチフォーマット」以外の型をご紹介します。
起承転結
最もよく知られた手法で、日本人なら誰もが知っているほど馴染みがある「型」です。ただし、注意点があります。
実は、「起承転結」は多くのビジネスプレゼンでは向いていません。というのも、聞き手が一番聞きたい「結」までの前置きが長くなりすぎて、聞き手が「結論は何!?」とストレスを感じるからです。
「起承転結」は物語話法において適しているフォーマットなので、「ストーリーで語る」プレゼンテーションのときにこそ使うといいでしょう。
目理方結
「目的→理由→方法→結論」の流れです。報告プレゼン等で使いやすいフォーマットの1つです。
「目的」を忘れず始めに言うことで、そのあとの話の方向性が明確になるため、お勧めの型の1つです。
DESC法
「Describe(描写する)→Express(説明する)→Suggest(提案する)→Choose(選択する)」の頭文字を取ったもので、アメリカの心理学者ゴードン・バウアーらによって提唱されました。
相手にとって厳しいことをソフトに伝えたいときなどに有効な方法です。
逆に、まわりくどいと思わせるリスクもあるため、「単刀直入」に伝えた方が良い場面ではあまりお勧めしません。
PREP法
「Point(要点)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(要点)」の流れでまとめる手法です。
「Example(具体例)」パートがあることと、「Point(要点)」を繰り返すことがこのフォーマットの特徴です。
抽象的な理屈の説明だけでは聞き手がイメージしずらいような内容を、「Example」で補足することで、理解を深めてもらうのに有効です。
比較的短めのプレゼンテーションに向いているフォーマットです。
SDS法
「Summary(要約)→Detail(詳細)→Summary(要約)」の流れで話していくフォーマットです。
「サンドイッチ法」をさらにシンプルにしたフォーマットです。
自己紹介や簡単な会社紹介など、シンプルで短めのプレゼンテーションに使いやすいでしょう。
構成だけではない資料作成のコツ
構成を明確にしたあとは、当然ながら資料作成に移ります。
いくらプレゼンの中身がしっかり組み立てられていても、スライド資料が見ずらいとやはり伝わりません。
以下に「見やすく、伝わりやすい」プレゼン資料のコツを、「テキスト表現」と「デザイン表現」の2つの観点でお伝えします。
テキスト表現のコツ
まず第一に、「1スライド=1メッセージ」の原則を守りましょう。情報が多くなりそうなら、2ページや3ページにスライドを分けて伝えます。
次に注意すべきは、専門用語です。自分では普通に使っている用語でも意外と聞き手は知らなかったりするものです。
なかでも一番注意すべきは、横文字です。ちょっとでも「怪しいな」と思ったら必ず補足説明を付けるようにしましょう。
パワーポイント資料をスクリーンに映してプレゼンテーションする場合、フォントは「游ゴシック」、「HGB明朝」、「メイリオ」の3つを使うのが適しています。また、文字サイズは「18ポイント以上、できれば24ポイント以上」の原則を守りましょう。
スライド資料に変化がないと、伝わりづらく、退屈に感じさせがちです。キーワードを太字にしたり、色を変えたりすることで重要性をしっかり伝えると、聞き手に訴求しやすいプレゼンテーションにすることができます。
デザイン表現のコツ
スライドのデザインにおける色使いは、意外と悩むものです。
基本は2色~3色使いにし、メインカラーとアクセントカラー(=サブカラー)を決めましょう。
データはできるだけグラフで表現し、シンプルにかつメリハリをつけるようにします。その際、資料に載せるのは特に重要なデータに絞るとともに、注目ポイントを強調して目立たせるようにすると効果的です。
スライドの図解の見せ方に関しては、「デザインの四原則」と呼ばれる理論に則って表現しましょう。
四原則の1つめは、『近接』と呼ばれるもので、関連性の高い情報同士は近くに隣接配置します。
2つめは、『整列』です。図やテキストの位置をできるだけ揃えることで、見やすく統一感を感じさせるようにします。
3つめは、『反復』と呼ばれるものです。同じような関係性のものは、基本的に同じ図解を使うことで混乱をさけるためのルールです。
4つめは、『対比』です。「大事な情報は目立たせ、そうでない情報は小さめに見せる」等、情報の重要度や種類の違いを大胆に対比して表す原則です。
いずれにしても、慣れないうちは他者のプレゼン資料を参考にしましょう。
ネットで探すと、ホワイトペーパー配布サイトやプレゼン資料を公開しているサイトがたくさんあります。
それらの構成やデザインを部分的に真似つつ資料を作ると、デザインが苦手な人でも良いものが作れます。
先人の知恵をフル活用するのは得策です。
仕上げのコツ
ここで説明した原則をもとに構成し、プレゼン資料を作成すると、効率的に良いものができるはずです。
その上で、仕上げの作業を行いましょう。それは、スライドとスライドの間の「繋ぎ言葉」を考えて、それを練習することです。
プレゼンテーションでのトークにおいて、話し手が「次に」「続きまして」という言葉だけで次のページに移っていくと、聞き手はスライド間のロジック・関係性が掴めません。
したがって、以下のような少し丁寧な「繋ぎ言葉」を挿入しましょう。
「以上が全体像です。それでは詳細を1つずつ説明していきますね」
「ここまではメリットの話をしてきました。では、デメリットにはどんなものが考えられるのでしょうか? 次のページから幾つかの点でご説明します」
これがあるだけで、聞き手への伝わり度合いが大きく上がります。
このように、資料を仕上げたあとも、本番のトークまでしっかりイメージし、リハーサル・練習することで自信を持ってプレゼンテーションに臨むことができます。
あなたのプレゼンテーション、ひいてはビジネスの成功は間違いないでしょう。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。