研修の効果を把握するアンケート作成 3つのポイント
世の会社ではさまざまな研修が行われていますが、多くの企業が研修を実施した後、効果の把握や今後のさらなる改良のためにアンケート実施を考えると思います。
しかし、「どのようなアンケートをとれば、研修の効果をより正確に測定できるのか?」と悩む研修担当者様も多いのではないでしょうか。特に、意識改革や行動変容を目的とした研修の効果は抽象的になりがちで、測定の難易度は高まります。
だからこそ、しっかりと練った上で適切なアンケートを設計し、実施する必要があるとも言えます。
今回は、研修の効果を見える化するためにどのようにアンケートを組み立てるといいか、また効果的なアンケートを行うための3つのポイントをお伝えするので、ぜひ参考にしてみてください。
研修の効果を測定するカークパトリックの4段階評価法
まず研修アンケート作成の際のベースになる、「カークパトリックの4段階評価法」をご紹介します。
アメリカの経営学者であるカークパトリック博士は、教育訓練の評価モデルとしてこの手法を開発しました。現在も研修効果を測定するメソッドとして世界的に定着しており、多くの企業がこの理論を参考にしています。
4段階の評価手順は以下の通りです。
<レベル1>Reaction(反応)
研修直後のアンケート調査などによる受講者の満足度を評価する
<レベル2>Learning(学習)
筆記試験や面談、アンケート等による学習到達度を評価する
<レベル3>Behavior(行動)
受講者自身へのインタビューや他者からの評価による行動変容を評価する
<レベル4>Results(業績)
研修受講に起因する業績や貢献度の向上度合いを評価する
研修直後のアンケートは学習満足度を計る
レベル1・2は主に研修を実施した直後に、レベル3・4は研修実施の数か月後に行うのが一般的です。
まずは、研修直後にレベル1・2に該当するアンケートを行います。
つまり、研修に対する満足度と学習度合の評価を問います。
研修が本当の意味で成功したかどうかを測るには、1カ月後、半年後といった長期的なスパンで行う必要があり、大掛かりなものになりがちです。
逆に言えば、研修直後のアンケートでは、研修の効果すべてを深く調査はできませんし、しなくてもよいということになります。
したがって、焦点は絞りやすくなるはずです。
研修直後に行うアンケートでは、以下のような項目を盛り込むのが一般的です。
② 研修講師の評価
③ 教材の評価(少し重要度が落ちるので、割愛は可)
④ 研修前の課題・目標はどの程度達成できたか?
⑤ 学びをどう実践しようと思うか?
⑥ その他、気づいたこと、感じたこと
上記の①~④は5段階評価等で「定量的」に測り、⑤⑥については自由記述にして「定性的」に測るといいでしょう。
研修評価を行うアンケートは数ヶ月後に
ある程度の期間を置いてレベル3・4に該当する調査を行います。
研修直後は参加者のモチベーションは高まっています。
ただ、そのモチベーションがずっと維持されるとは限らないため、研修直後だけのアンケートでは、研修の正確な効果を判断するには難しいものがあります。
したがって、実際に研修の効果が表れているかどうかを知るために、フォローアップが必要になります。
具体的には、下記のような手法が有効です。
・より踏み込んだアンケート調査
・インタビュー
これらのテストやアンケート、インタビューを研修の1か月~数か月後に行うことで、「研修の効果は表れているか?」「自身の業務に生かせているか?」「成果につながっているか?」を調査することができます。
数か月後アンケートでは、以下のような項目を盛り込むといいでしょう。
・実践できたこと、できなかったこととその理由
・改めて、研修内容を踏まえて得られたと感じる効果
研修アンケートをもっと効果的にするには
アンケート調査をより効果的なものにするためにはコツがあり、以下に3つのポイントにまとめました。
■ポイント1 : アンケートの目的を考えて、記名・無記名の判断を行う
アンケートに名前を書いてもらうかどうかの判断はなかなか難しいと思います。
最終的には、「何を一番の目的にするか?」で決めるのが適切です。
「受講者に本音を書いて欲しい」と強く思うならば、無記名にして自由に書いてもらうのがいいでしょう。
それよりも、「受講者の意識向上やその後のフォローによって効果定着を図りたい」という意図が強いのであれば、記名にするのがお勧めです。
■ポイント2 : フリーコメントの記入欄を大きめにする
これは意外と盲点です。
「研修全般に関して気づいたことや意見」をフリーに書いてもらうと、こちらが全く想定していなかった参考になるコメントや指摘が出てきます。
それなのに、この欄を小さくしてしまったが故に、受講者が短くあっさりとしたコメントしか書けず、企画者として本来得られたであろう貴重な情報を逃しているケースが多く見られます。
欄を大きめに用意すると、人間は自然とたくさん書こうとして、それによって思考が進み、深いコメントになるものです。
ぜひフリーコメントの欄はたっぷり取ることをお勧めします。
■ポイント3 アンケート記入自体を学びと実践のサポートのツールにする
研修で学んだことを言語化してアンケートに書くことで、改めて思考が整理され、気づきや学習定着の後押しになります。
また、実践のためのアクションプランを書くことで、ちょっとした宣言になり、良い意味の強制力が働き、職場実践に繋がっていきます。
そのためにも、アンケートは「導きたい成果」から逆算して設計し、実施と検証をくりかえりながら、少しずつ改良していきたいものです。
業績向上の為にも研修アンケートを
以上、効果的な研修アンケートの作り方について、ポイントを解説させていただきました。
企業における研修は、従業員の行動変容やスキルアップを通じて、最終的には企業全体の業績向上につながります。
アンケートを上手く作成・活用して、研修担当者様や部門が望む成果に導いていただけばと思います。