from 西野浩輝

経営者のプレゼンに求められる最重要コンセプト

私が経営者の指導をする際、いつも決まってするアドバイスがあります。

それは、 「『この人の神輿を担ぎたい!』と聞き手に思わせるようなプレゼンテーション を目指しましょう」 というメッセージです。 どういうことかを詳しく説明しましょう。

「経営者は広告塔」と言われますよね?

要は、経営者の語りは会社のブランド、ひいては事業の成長発展に大きな影響 力を持っているという意味です。
なのに、自社・自分のPRを行えるせっかくのプレゼン機会を十分に生かせて いない経営者が多いのも事実。

たとえば、方針を語る際、単に無味乾燥な目標数字を伝えるだけだったり、 「環境変化が激しい昨今・・・」といった借り物のような言葉を並べるだけ だったり。
あまりにももったいないと感じます。

経営者はプレゼンテーションによって、聞き手である顧客や社員、投資家を 共感させ、ハートを動かし、巻き込んでいくことでビジネスを発展させてい かないといけない。
そのためにも「この人の神輿を担ぎたい!」と感じさせるプレゼンテーションを する必要があるのです。

そのことをまさに実践していて、私の指導先でもある、1人の経営者の例を ご紹介します。

その方は「2050年ビジョン」というものを掲げて、ことあるごとにプレゼンテーションをしています。
聞き手は、取引先であったり、社員であったり。 プレゼン内容に関して、ここではあまり詳しく書けないのですが、 簡単に要約すると・・ ・

2050年には社会はどんな風になっているのか?
そこで自社がどんなミッション、ビジョンのもとに、どんな貢献をしているか?
そのために、自分たちは今何を頑張るべきなのか?
最終的にどんな素晴らしい世界が待ち受けているのか?

そういう30年以上先の未来の夢や思いを熱く語りかけている。 その経営者自身は間違いなく引退しているであろう先のことを。

だからこそ聞き手はその人の本気を感じ、「ぜひこの人の神輿を担ぎたい」と 思って、目を輝かせてプレゼンテーションに聞き入っているのです。

「その人に加担したい」は現代における1つの欲求

では、なぜ今そういった「この人を担ぎたい」と思わせるプレゼンテーションが大事なのでしょうか?

一番の理由は、現代の多くの人の価値観がそれを求めているからです。

これまでの価値観は、端的に言うと「自分自身の成功 =幸せ」に近かったと思います。

ただし、今は「貢献」の時代と言われています。自分さえ成功すればいいというだけでは、もはや飽き足らなくなっています。
現代人は「他人の幸せ、社会の幸せに対し自分が貢献している」実感を欲しているのです。

社会を幸せにする最も直接的な方法は、自らのビジョンや理念をもとに起業し、それを通じて実現を図っていくことです。

けれども、そのハードルは高いもの。

事業を自ら興すのは、覚悟も発想力も行動力も必要です。
多くの人が躊躇してしまうのももっともです。

だからこそ、自分が共感できる夢やビジョンを旗印に掲げ、先導しているリーダーを見ると、「自分もそれに加わりたい」「担ぎたい」となるのです。

そのことを如実に示している好例があります。

クラウドファンディングです。

クラウド上で自分のビジョンを示し、それに共感してもらった人から投資を募るこの新しい投資手法が今、大きな広がりを見せています。

これは、多くの現代人が夢・ビジョンを掲げている人を見つけ、その実現に加担したいと欲していることの証と言えるでしょう。

ビジョン・プレゼンテーションの持つパワー

プレゼンテーションには、他にはない圧倒的な強みがあります。

それは、「ライブ感」とともに聞き手に「直接」熱く語りかけることで、心をより強く動かし、鷲掴みにできること。

この「プレゼンテーションの真のパワー」に気づいた経営者が今、「ビジョン・プレゼンテーション力」を磨き始めています。
それが、急激に「経営者プレゼンテーション指導」が増えている一番の理由だと私は分析しています。

残念ながらこれまで日本の経営者は欧米に比べて、プレゼンテーションの重要性への認識が低かったと言わざるを得ません。

ただし、その潮流は変わりつつあります。

「神輿をかつぎたくなる」ビジョンプレゼンテーションが増えることで、より多くの人が一緒に夢を共有することができ、ひいてはそれが社会を動かす原動力になれば嬉しく思います。

そのために私自身も微力ながらお手伝いできればと思っています。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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