会議における問題とその源泉
「会議で上の人間ばかりが話していて、下の人間が意見を言える文化がうちにはない」
「会議と現場が乖離していて『まぁ現場は現場で考えましょう』みたいなことを平気で言っている人間がいる」
「会議参加者がどこか他人事で、当事者意識に欠ける。だから決まったことも実行されない」
様々な企業の様々な部署から会議の悩みを聴きます。
こうした課題は単に会議の問題ではなく、組織文化に根差したもの(組織文化が会議に表出しているもの)であるため一朝一夕でポンと良くなることはありません。
単なるファシリテーション研修では会議はよくならない
こうした会議の改善を目的としてファシリテーション研修の導入を考える企業は多いのですが、正直なかなかうまくいきません。うまくいかない理由は大きく3つあります。
- そもそも会議にファシリテーターを立てる習慣がない
ファシリテーション研修を実施してスキルを学んでも、ファシリテーターが「はい、私がファシリテーターをやります」と手を上げにくい - 意見を出さない文化が組織に根付いているため、ファシリテーターのがんばりだけではどうにもならない
- ふせんでアイデアを書き出しグルーピングするなど研修で学ぶ会議ツールがこれまでの会議の進め方と大きく違うため「これでやりましょう」と言い出しにくい。勇気をもって提案しても、参加者も「はいはい、また何か変なこと習ってきたんでしょ」と冷めた空気が加速する
こうした問題を解決できない限り、研修は問題を解決してくれません。
会議成功のカギを握るのは参加者教育の視点
上記のような障害を取り除くために試してほしいのが「会議の参加者教育」という視点です。正確には「ファシリテーター教育をおこないつつ、同時に参加者教育をおこなう」というダブルアプローチです。
というのは参加者の活性化こそが会議の価値向上のセンターピンであり、ファシリテーター養成はそのための手段でしかないからです。
会議で意見を出すのはファシリテーターではなく参加者。意見をまとめるのもファシリテーターがやらずとも、参加者がやればよいのです。そして何よりも会議後のアクションアイテムの実行は参加者がおこなうこと。彼らの本気に火が付くことが目的であり、その目的が達成されればファシリテーターは不要だとすら言えます。
であれば間接的にファシリテーターを養成し、その先にいる参加者に影響を与えようとするよりも、直接参加者にアプローチしたほうが効果的なことは当然です。
ファシリテーター教育と参加者教育の相乗効果を狙う
一方でファシリテーター養成に重きを置く正当な理由もあります。何よりも「ファシリテーターひとりが育てば、その人がひとりでたくさんの会議を活性化できる」ということが大きいでしょう。
だからこそ参加者教育とファシリテーター教育は両方とも外せない視点であり、ダブルアプローチが有効です。
そしてもう一点、両方の教育を同時にするダブルアプローチが有効な理由があります。それが「ファシリテーターは参加者の気持ちを、参加者はファシリテーターの気持ちをもっと理解することで会議は活性化する」からです。
参加者を見ず、議題だけを追うファシリテーションは予定調和の結論にしかたどり着きません。ファシリテーターの苦労を知らない参加者はつい力を抜いてしまいがちです。逆に、お互いを知ることがプラスに働くのは自明の理でしょう。
ダブルアプローチの効用
こうしたダブルアプローチをとることで、組織にとってはスムーズな会議変革がおこないやすくなります。
- ファシリテーターは参加者の気持ちに寄り添ったファシリテーションスキルが習得できる
- 参加者は自分の役割の大切さを認識し、会議で活発に意見するのはもちろんのこと、ときにはアンオフィシャルな進行役として会議を活性化できる
- ファシリテーターを立てない会議でも、それぞれが「会議を価値あるものにするのは自分の役割」との認識を高くもって取り組むことができる
弊社でのファシリテーション研修はこのような考え方をベースに組み立てられていますが、研修導入以外でも「ファシリテーター教育×参加者教育」を同時におこなうつもりでやってみてください。ご参考に。