from 西野浩輝

人生のターニングポイントになる研修を提供する

「あなたは自分のことを、どんな人間だと思っていますか?」 

もし誰かからそう訊ねられたなら、どんな答えをしますか?

 私は迷うことなく「成長中毒者です!」と答えます。

そんな私がプレゼンテーションを中心とした研修事業に取り組む中で実現したいこと。

それは「より多くの人を成長中毒にさせること」です。

私はトレーニングを通じて、受講者に「自分は今、確かに伸びている」という成長実感を感じてほしいと思いながら日々臨んでいます。また「研修後もこうやれば自分を伸ばし続けることができるんだ」というさらなる成長予感とそのためのキモについても、つかんで帰ってほしいと思っています。

人は成長する喜び、高みに達する喜びを一度味わうと、「もっと成長したい!」「もっと高みを見てみたい!」という気持ちになり、さらに次の成長を追い求めるもの。

いわば、自己成長というスパイラルが回り始めるのです。そしてその経験が二度三度と繰り返されるとやみつきになり、自分でも止められない状態になっていきます。

これが私が言うところの「成長中毒」なのです。

トレーニングを受けたことがきっかけで、成長意欲が止まらなくなる。常に成長したくてうずうずしている自分になる。そんな人生のターニングポイントになるような機会を提供したいと思い、全身全霊を注ぎ込んでいます。

挫折が、私の成長中毒の出発点となった

人を成長中毒にさせるのは成長実感の喜びだけではありません。

「挫折」や「苦境」もまたそのきっかけとなり得ます。私の場合もまさにそうでした。

私は大学を卒業してリクルートという会社に就職しました。

そのうちの多くの期間を研修サービスを提供する部門で営業マンとして働き、幸運なことにトップの営業成績を上げることができました。そして30歳の時に意気揚々と、ある外資系の人材教育会社に転職します。しかしそこで大きな壁にぶち当たったのです。

本社をアメリカに持つその企業は、上司や同僚の多くが外国人でした。

したがって、コミュニケーションやディスカッションは英語で行われます。英語ネイティブでない日本人にはなかなか高い障壁です。その中で特に苦しんだのが、会社の営業戦略や商品に関するディスカッションの場面。いつも自分の考えをうまく発言できなくて歯がゆい思いをしていました。

自分なりの意見は、頭の中にあります。けれどもそれを言葉にし、組み立て、適切に表現することができなかったのです。

それは単に英語力が不足していただけではありません。その会社は研修を販売している会社だけあって、社員はおしなべてプレゼンが上手でした。

私もリクルート時代には「自分はそれなりにプレゼンはできるほうだ」と思っていましたが、彼らと比べるとまだまだ不十分であることを突きつけられたのです。私の中にあった小さな自信はあっという間に打ち砕かれました。

人生の土俵際に追い込まれた「クビ宣告」

苦しむ私に追い討ちをかけたのが「クビ宣告」でした。

一社目とは全く違う環境だったということもあり、入社以来営業成績が伸び悩んでいました。そして会社からついに「2カ月以内にこの営業ノルマをクリアできなければ解雇だ!」と通告されたのです。その提示されたノルマはとてつもなく高いものでした。

「このままでは2か月後、間違いなくクビだ。でも私には養わないといけない家族がいる。妻とゼロ歳の子供を路頭に迷わせるわけにはいかない!」。退路を断たれた私は「四の五の言わず、やるしかない」と腹を括りました。

「この残された期間で何ができるだろう?」と死ぬ気で考えて出た結論は、「1つ1つの顧客訪問で限りなく大きなインパクトを残す」ということでした。

まず手をつけたのが、同僚に他クライアントの成功事例を徹底的に聞きまくったこと。

「どういう目的でこの会社はウチのサービスを導入したのか? どんな問題がどう解決されたのか?」ということを呆れられるほどしつこく聞いて回り、ストックしていきました。その上で、顧客訪問ごとにシナリオを作り、さらに途中の電車の中では人目も気にせずぶつぶつ言いながらプレゼントークの練習をして練り上げたのです。そうやって毎回最高のプレゼントークを準備し、臨むということを2か月間やり続けました。

2か月後、結果はどうだったか? 何と奇跡的にそのノルマを達成することができたのです。クビ宣告をした上司は目を丸くして驚いていました。

というのも、「まさか達成するとはないだろう」と高をくくり、次の人の採用を決めていたくらいでしたから。

この経験によって、私はこれ以上ないほどの自信を持つことができました。

「自分はこんな高い壁でさえも乗り越えられた。ならば今後どんな苦難でも越えられるはずだ」と。

ただ、この経験はそれ以上のものを与えてくれました。成長する喜びです。

今振り返って、この2か月ほど力がついた時期はないなと感じています。そしてこの成功体験ならぬ『成長』体験によって「もっとこの快感を得たい!」と強く思うようになったのです。

まさにこのときから私の本格的な成長中毒スパイラルが始まったと言えます。

次なる成長の山に照準が定まった瞬間

クビ宣告から蘇り、数カ月経った頃こんな出来事がありました。

ある世界的な英語スピーチコンテストの日本大会を見に行ったときのことです。最終決戦に残っていたのは、半分ぐらいが日本在住のネイティブの外国人で、残り半分が日本人でした。

その中で優勝したのは、なんとジャパニーズ・イングリッシュまる出しの英語でスピーチしていた日本人のおばちゃん(失礼!)でした。

いうまでもなく、英語の発音という点ではかなり問題がありました。出場者の中では最下位だったかもしれません。けれどもそのおばちゃんは英語力不足を補って余りある程スピーチ力が秀でていたため、優勝を勝ち取ることができたのです。

大半の日本人は、英語を話すという観点で大きなハンディを抱えています。

だとしてもスピーチ力やプレゼン力を磨けば、英語を母国語としていなくても、十分に世界と太刀打ちできる。ジャパニーズ・イングリッシュのおばちゃんは、そのことを私に教えてくれたような気がしました。

「自分だって英語ネイティブに負けないプレゼンができるようになる」。

まさにそれは、『次なる成長の山にフォーカスが定まった』瞬間でした。

成長スパイラルの大きな一歩を踏み出した

そこで私はプレゼン力と英語力を磨くために何をしたか?

 自ら主宰者となって英語スピーチクラブを立ち上げたのです。「英語スピーチ力を何とか向上させたい」という強い意思を持っているメンバー達を集め、互いのスピーチに対してかなり厳しくコメントを言い合うスタイルを取りました。

このクラブは7年ほど続き、私自身、渾身の英語スピーチを合計で300回くらい行いました。この1000本ノックのような量稽古は自分のプレゼン力を飛躍的に伸ばしてくれたと思います。

私が今、日英両言語でプロのプレゼン講師としてやっていけている理由の一つとして、このスピーチクラブでの経験は間違いなく大きいと言えます。

成長意欲の発火点を作るのはフィードバック

2003年に研修コンサルティング事業を立ち上げ、自らも講師を務めています。

私にとって毎回毎回の研修は至上の喜びであるとともに、まさに真剣勝負でもあります。受講者と向き合い、「どうやったらこの人の成長意欲に点火し、ターニングポイントを作れるか?」ということに全神経を注いでいます。

そのための一番のコアは、フィードバックです。

受講者の良い点と改善点を指摘するということ。その際の鍵は、その人の改善・成長のためのセンターピンを的確に捉えることなのです。その上でさらに実習に取り組んでもらうと、明らかに研修中に本人が気づけるほど大きな改善が見られます。研修の終了時には「成長実感」とさらなる「成長予感」を感じてもらうことができるというわけです。

ただし、これは口で言うほど簡単ではなく、常に七転八倒しながらやっています。毎回の研修後の電車の中は「一人反省会」です。

「もっと彼を引き上げることができたんじゃないだろうか?」、「ターニングポイントを作るために他にもできることがあったはず・・」と悶々と考えています。

そしてその省察を次の研修のフィードバックに生かす。そのスパイラルを無限に回しています。

結局私は今受講者の成長のための「成長中毒」に陥っているのです。

ある受講者が成長中毒になり、大きく飛躍した

そんな中から時折、研修を境に文字通り「化ける」受講者が現れます。

営業マンのKさんもそうでした。

彼は私のプレゼン研修を受講したことを機に、2種類のツールを常に持ち歩くようにしたそうです。
一つは、研修のテキストを1枚に要約したシート。もう一つが自分が研修の中で受けたフィードバックコメントを書いたメモ。

それを毎回の商談の前に見て振り返り、頭に叩き込んでから臨んだのです。後日それらのシートを見せてもらう機会があったのですが、ぼろぼろになっていました。それくらい使い込んでいたんですね。

さすがにそこまでの徹底した準備を毎回行い、自己フィードバックのサイクルを回せば、当然ながらプレゼントークの質は加速度的に向上していきます。
すると顧客が提案を受け入れてくれる確率も格段に向上する。このようにして、自ら作り出した成長スパイラルは着実に成果に転化していきました。

数か月後Kさんは社長賞をもらうほどの業績を叩き出し、マネジャーに昇格しました。

今は、自身の部下に自分がたどった道を歩ませることで、成長スパイラルを登っていけるように日々取り組んでいるそうです。

プレゼンは成長中毒の入り口にもってこい

成長中毒になる対象は無数にあると思いますが、その中でもプレゼンは、その入り口として最もふさわしい一つだと思っています。

なぜなら私たちの生活はプレゼンの連続だからです。

プレゼンといっても、聴衆を何十人も集めて行うものだけが、プレゼンではありません。上司や顧客にちょっとした提案や説明を行うのも立派なプレゼンです。そう考えると誰だってプレゼンの場面は多いのです。

さらにプレゼンは、成功体験を感じやすい対象でもあります。聞き手の反応が伝わってきやすいのです。

うまくいったときには、「自分は認められている」という自己重要感と、「他者に貢献できている」という自己効力感を同時に味わうことができます。
そしてプレゼン力が上達すればするほど、聞き手の反応もより大きくなるため成長実感を感じやすく、結果的に成長中毒に陥りやすいわけです。

プレゼンにおいて成長中毒になった人は、それをきっかけにプレゼン以外の物事についても何事に対しても成長を求めるようになります。自分が成長していくあの快感が忘れられないから。あらゆる努力、あらゆる工夫をして成長スパイラルを回し、高みに達しようとします。

そうして人生全般の成長スピードが加速していき、人生が充実し、輝いていくのです。

プレゼンテーションはそれだけの可能性を秘めているものなのです。

「成長中毒」という名の炎を燃やし続けたい

私にとって研修講師・コンサルタントの仕事は天職です。
こんなエキサイティングな仕事には巡り会えた自分は果報者だなと思います。

そのなかで最大のエクスタシーの瞬間は、受講者の成長意欲に火をつけ、成長中毒にさせることができたとき。もうこれは何事にも代えがたい。

だからこそ一人でも多くの受講者に、自分の可能性の花を咲かせる喜びを味わってほしいと心から願っています。
そうした充実した人生を送っている人が増えていけば、会社が元気になります。社会も元気になります。ひいては世界全体が元気になっていくはずだと信じています。

「あなたは何を成し遂げたい人ですか?」もし誰かからそう訊ねられたなら、私は迷うことなくこう答えます。

「成長中毒者を一人でもたくさん作ることです」と。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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