「これぞ究極の提案営業!」を経験した私のエピソード

私は研修講師やコンサルタントとして、営業担当者を指導させていただく機会が多く、そのため彼らの営業スキルに関して厳しい目を持って評価するのが常です。

 ある意味これは当然のことで、現状を正確に掴み、深く分析できて、はじめてその営業担当者の能力をどう伸ばしていけばいいかがわかるからです。

そういう癖がついているので、自分が逆にお客の立場で営業を受ける際にも、ついつい「この担当者の営業力はどうかな?」という風な評価的な目で見てしまいます。もう職業病といっていいでしょう。

そんなシビアな目を持つ私が、「この人の営業は素晴らしい。これこそ提案営業のお手本だ!」と思わずうなってしまう営業を経験しました。

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その方は『イメージ・コンサルタント』といって、ビジネスマンの印象が引き立つために、スーツなどの見立てをコーディネートしてくれるサービスをしている専門家です。

私自身、プレゼンテーションを教える立場なので、やはり外見・印象は非常に大事です。

そういう意味で、知人に紹介してもらい、コンサルティングを受けてみました。結果、上記のような見事な営業を受けることができました。

この彼の応対にこそ「提案営業の神髄」が詰まっていると感じたので、営業の専門家として私なりに分析してお伝えしたいと思います。

「お客さまのニーズに応える」とはどういうことなのか?

「いい営業はお客さまのニーズにしっかり答えること」というのは、耳にタコができるほど頻繁に聞く話です。

 私も日常いろいろな場面で接客サービスを受けるのですが、正直言って驚くほどレベルの低い営業をされることも少なくありません。

1つの悪い例は、自分の考えを押し付けてくる営業。

勧めている本人は「これが正しいんだ!」という信念の元、お客さまにアドバイスをしているつもりなのでしょうが、肝心の顧客が求めているものはそっちのけになっている。

これではさすがに売られる方は気分よくないですし、気持ちよく買う気になりません。

じゃあ、顧客の言うことをそのまま全部聞けばいいかというと、それでは単なる御用聞き営業になる。これなら極端な話、子供でもできてしまう。

その営業担当者が居る意味が全くなく、非常に頼りない営業に映ります。

「要望に応えない」と「要望を鵜呑みにする」という上記の2つは、表面的にはトレードオフ(あっちを立てれば、こっちがたたず)の関係です。

 ではどうすればいいのか?

一言で言うと、「相手の意を汲む」というのが正解です。

提案営業の神髄は、お客さまの『意を汲む』こと

私は、スーツなどのスタイルに関して、自分なりのこだわりを結構強く持っています。

たとえばスーツは常にダブルで、かつやや大きめのサイズがいいと思っています。
これは若い時からこだわっていることで、そのスタイルを通じて「ゆったり感」「威厳」「一家言持っている」といういい印象を持たせたい、という思いがあるからです。

今までもスーツの見立て等のコンサルティングを受けたことは何度かあったのですが、
上記の私のこだわりを言うと大体「ダブルスーツはそういう着方をしない」「西野さんには合わない」というアドバイスが圧倒的に多く、ほぼ否定のみ。

専門家としての見解だということは頭ではわかるのですが、やはりあまりハッピーな気持ちにはなりません。

それとは逆に、私の要望を聞いてくれる人もいましたが、私の言ったことを『そのまま』受け入れてくれるだけでした。それもちょっと物足りない。
「プロなんだからいいアドバイスくれよー」と内心では思っていました。

今回のイメージコンサルタントの方は、上記のいずれでもなかったんですね。

まず、私がこだわっている理由・背景をしっかり聞き出してくれました。その上で、「こだわりを生かしながらもオシャレ度をしっかりキープし、かつ出したい印象を醸し出すためにはどうするか?」を提案してくれたのです。

1つ例を挙げると、「胸のあたりのゆったり感を残したまま、ウェストはもう少し絞りましょう。ズボンに関しては、こうしましょう。そうすると、西野さんらしさを保ちつつ、よりかっこよくなりますよ」とアドバイスしてくれたのです。

 そういった幾つかの秀逸な提案・アドバイスを経験するなかで、私は「この人に全部任せよう!」と思ったんですね。

この営業プロセスをまとめるなら、「相手の意を汲み、本意をしっかりつかんだ上で、プロとしての見解・アドバイスを加えて提案した」ということなのです。

その結果、営業マン側からすると理想である、「あなたにお任せします!」というお客を作るということを実現できたわけです。

「Why」と「相手視点」によって、『意を汲む』能力を育てる

ではどのようにしてこれらの能力を開発していけるのか?営業マネジャーや営業マン教育の責任者の方なら、気になる点でしょう。

私は、「Why」と「相手視点」の2つがキーワードであると考えています。  

まずは、「Why」

意を汲む、ということは結局相手の「意図をしっかり掴む」ということとも言えます。
そのためには、「『なぜ(=Why)』そのニーズ・要望なのか?」を掴もう、聞こうとする姿勢を持つこと。

これは意外と簡単なようで難しい。
だからこそ、営業マンにはこの『Why』考えさせるよう、常日頃から働きかけてほしいと思います。

もう一つが相手視点です。

ただ、「相手の立場に立って考えろ」というのは言うは易し・行うは難しです。
だからもう少しひねりが必要。ではどうするか? 

「もし自分が相手だったらどう思うかな?」と営業担当者に常に問いかけ、それを通じて、
最終的に自問自答できるようにすることです。

そうすると、人間は意外と気づくもの。
これもやはり日常の習慣化なんですね。

ぜひ実践してみてください。