
「プレゼンが苦手です」「自信を持って話せません」という声をよく耳にします。実は、私も昔は「プレゼンが得意」とは程遠い存在でした。
ところが、ある小さな出来事をきっかけに、「やればできる」という成功体験を積み重ね、気づけばプレゼン研修のプロとして7万人以上に指導し、本も8冊出版するようになりました。
今回は、プレゼンに自信をつけるための「最初の小さな成功体験」をどう作るか、そのコツをお伝えします。
小さなプレゼンで得た「やればできる」感覚
私は以前勤めていた会社で、商品開発の部署に所属していたことがあります。
あるとき、新商品開発の状況報告をする機会があったのですが、そこで私は「ここで良い発表をして、『西野、やるじゃん』と思わせたい」と考えました。聞き手はたった4~5人の会議であり、「プレゼン」という言い方をするのが大げさなくらいの規模です。
それでも、その小さな社内プレゼンに向けて、私は信じられないくらいの努力をしました。入念に資料を作成し、その上で繰り返し声に出して練習。「正」の字を書いて練習回数をカウントし、声のトーンや間の取り方まで細かく調整しました。
当然、誰かに見られるのは恥ずかしいので、完全に「こそ練」でした。「たった数人の前での発表に、ここまでやる必要があるのか?」と自分でも思いながらも、とにかく必死でした。
そして迎えた本番。驚いたことに、私は堂々と話せただけでなく、アドリブまで出るほど余裕がありました。聞き手も想定以上に真剣に聞いてくれ、「わかりやすかったよ」といった声が次々と。
その瞬間、「やればできるかも」と自信の芽が生まれました。
「プレゼンが上手い」と言われるようになった理由
この小さな成功体験がきっかけで、次の機会が訪れました。営業部向けに30人規模の勉強会の講師を依頼されたのです。「さすがに今回は難しいかも」と思いましたが、前回の経験が背中を押しました。
同じように入念に準備し、繰り返し練習して臨むと、またもや成功。気づけば、「西野はプレゼンが上手い」と社内で言われるようになり、勉強会の依頼が増えていきました。そうやって、いつの間にかプレゼンが得意になり、今では全国で研修を行っています。
成功体験を生むために──「300分のこそ練」

ここで重要なのは、「成功体験の力」です。人は成功体験を積めば自信がつくと分かっていますが、「どうやって最初の一歩を踏み出すのか?」が分からないことが多い。だから、私は研修でこう力説します。
「たとえ小さな場面でもいいから、徹底的に練習をして挑んでみましょう」
具体的には、「300分、声に出して練習する」。例えば10分のプレゼンなら30回、1時間のプレゼンなら5~6回。こう聞くと「そんなに時間を取れないよ」と思うかもしれませんが、スキマ時間を活用すれば意外とできるものです。
実際、私がマンツーマン指導をする際も、この「声に出しての練習」を最優先します。細かいテクニックも大事ですが、結局のところ、これが一番の上達法なのです。
「こそ練」が自信と未来を作る
こうした練習を通じて「やればできる」という実感が生まれます。この実感こそが自信につながり、次のプレゼン成功への扉を開くのです。大がかりなプレゼンの場を用意する必要はありません。
社内の定例会議や、数人の前で話す機会を「第一歩」として活用すればいいのです。チャンスは目の前にあります。それを拾うかどうかは、あなた次第。
まずは一度でいいから、これでもかと思うほど「こそ練」して、プレゼンに臨んでみてください。きっと、その効果に驚くはずです。