
クロネスAG様は、ドイツに本社を構えるグローバル企業です。飲料向けの充填・包装機器や、ビールなどの醸造設備の製造において、世界トップのシェアを誇っています。その日本法人である日本クロネス株式会社様は1984年に設立され、国内の大手飲料メーカーを取引先としています。
日本クロネス様では、このたびマネジャー層12名を対象に2日間にわたってマネジメント研修を実施されました。研修講師は西野浩輝が務めました。
研修を企画され、また自らも受講者として研修に参加された代表取締役の宮﨑貴之様と人事総務部部長の成島千春様に、研修を実施された狙いや経緯、研修会社にマーキュリッチを選ばれた理由、研修内容に対する評価や得られた成果についてお話を伺いました。
会社の期待とメンバーの意識にギャップが生じていた
― 御社では2024年8月に2日間、管理職を対象にマネジメント研修を実施されました。研修を行うことにされた狙い、経緯をお聞かせください。

宮﨑様 「日本クロネスのマネジャーに求められる役割とは何か?」を一人ひとりがしっかりと理解し、実践できるようになってほしいというのが一番の狙いでした。当社としてマネジャー層に求めているのは、会社の方針を踏まえた上で、自身が束ねているチームの方向性を自立的に考え、意思決定を行い、メンバーを巻き込みながら目標達成に向けて組織を導いていけることです。
研修の必要性を実感したのは、2024年1月に前職から当社の代表取締役に就任してすぐ、全社員との1on1ミーティングを始めたときのことです。その中でマネジャー層から話を聞くうちに、各々が「自身が思い描いているマネジャー像」に沿って行動している面があり、会社が期待する役割との間にギャップが生じていることに気づいたのです。
私には前職の会社でマネジメント研修を実施した際に、マネジャーの間で自身の役割に対する認識が大きく変わったという経験がありました。そこで当社のマネジャー職にも「研修を行いたいのだが、どう思うか」と尋ねたところ、「ぜひ受講したい」という返答だったので、実施することにしたのです。
成島様 当社は社員数65名の組織です。マネジャーといえどもプレイヤーとして動かなくてはいけないことが多々あります。ともすればマネジャーよりもプレイヤーとしての意識のほうが強くなりがちです。しかしマネジャーは、チームを束ねる立場にあるわけですから、プレイヤーとしての業務以上にマネジャーとしての責務を果たしていく必要があります。理想はマネジメント6割、プレイイング4割の配分で仕事に取り組んでもらうことです。その点でも、研修を通じて自身の役割への意識を高めることは、非常に意味のあることでした。
当社の課題やニーズを丁寧に聞き出してくれた
― 研修会社にマーキュリッチを選んだ理由を教えてください。
成島様 候補の研修会社を事前に3社ほどお声がけした中から、最終的にマーキュリッチさんを選択しました。実は今回講師を務めていただいたマーキュリッチの西野さんには、以前も当社のマネジャー1名に対してプレゼンテーションをテーマとしたマンツーマンコンサルティングを依頼したことがありました。月1回~2回、1回2時間のトレーニングを半年あまりにわたって行った結果、プレゼン力はもちろんのこと、上司との1on1ミーティングの際に十分な準備をしてから臨むようになるなど、コミュニケーション全般に対する姿勢が見違えるように変わりました。そうした実績と信頼に基づいて、今回もマーキュリッチさんにお願いしようと考えました。
宮﨑様 加えて、事前のヒアリングの際に、当社の課題やニーズを丁寧に聞き出し、研修内容に反映しようとしてくださっている姿勢も高く評価しました。
当社では私の就任後、新たにビジョン・ミッション・バリューを策定しました。重要なのは、まずマネジャー層がこの内容を深く理解することです。その上で、ビジョン・ミッション・バリューに基づいた判断・行動を実践し、さらにはこれらをチームに浸透させていく役割を担っていくことです。せっかく作ったビジョン・ミッション・バリューがお題目になってしまってはいけないという課題意識がありました。
事前ヒアリングのときに、そのことを西野さんにお話ししたところ、適宜当社のビジョン・ミッション・バリューに触れながら研修を進めていくことで、受講者への意識づけを図っていくという提案をしてくださいました。
受講者の経験値が異なる中でも実りある学びを実現
― マーキュリッチが提供した研修の内容については、どう評価されていますか。
宮﨑様 今回の研修には、代表取締役である私から、マネジャーになったばかりの社員まで、マネジャーとしての経験値が大きく異なる計12名が受講しました。そうした中で、経験豊富なマネジャーにとっても、新任マネジャーにとっても、それぞれが必要な学びを得られる研修だったと思います。
マーキュリッチさんの研修の特徴は、座学だけではなく、ペアワークやロールプレイ等、対話や実践の場面が多く取り入れられていることです。西野さんがマネジメントについての考え方や、マネジャーとしてのあるべき姿などについて話された後に、受講者は西野さんから出されたテーマやお題に対してペアで取り組んでいきます。
ペアワークですと、自分が話す相手は1人ですから、全員の前で発表する場合とは異なり、経験の浅い社員でも発言のハードルが下がります。またペアは、直属の上司-部下関係にはないベテラン・中堅のマネジャーと経験の浅いマネジャーを組み合わせる形が取られました。すると経験の浅い受講者は、経験豊富な受講者の発言から新たな発見や視点を得ることができます。一方経験豊富な受講者は自身の発言を通じて、これまでの自分の経験を整理し、体系化することができます。
また西野さんは、受講者を研修にスムーズに乗せていくのも非常に上手でした。講義の時間も、一方的に話すのではなく、適宜受講者にコメントを求めながら進めていました。受講者は一言発言することで緊張感が解け、その後の発言や質問がしやすくなります。全員が発言できる場づくりを意識してくださったこともあり、どの受講者も最後まで集中力を切らすことなく研修に参加することができていました。
成島様 研修終了後に受講者にアンケートを実施したのですが、非常に高い評価が得られました。「これまでも何度かマネジメント研修を受けてきたが、今までで一番よかった」とコメントした受講者もいました。
その理由の一つとして、実務に直結した話題を多く取り上げてくださったことがあると思います。例えばペアワークでのテーマの一つに「退職の相談をしてきた部下にどう対応するか」というものがありました。ペアが交互に上司役、部下役となってロールプレイを行い、その様子をスマートフォンで撮影して、振り返るというセッションでした。
受講者は、撮影した動画を見直しながら、「こんな表情で部下と接していたら、部下をかえって不安にさせるかも。現実にそういう場面に遭遇したときには気をつけよう」「相手役の○○さんの聴き方、話し方はとても参考になるな。自分も取り入れよう」といったように、日々のマネジメントで実践できる具体的なヒントを多く得ることができたと思います。

― 成島様ご自身が受講者として研修に参加された中で、特に印象に残っていることは何でしょうか。
成島様 「部下を愛しなさい」という西野さんの言葉が強く胸に刺さりました。私は「部下を愛する」という感覚は今まで持っていませんでした。家族ならわかりますが、上司と部下との関係でこうした表現を聞いたのは初めてで衝撃的でした。もちろん部下への配慮は考えてきましたが、「愛する」という深いところまでは至っていなかった。受講後は、自分は部下を愛せているかということを、いつも頭に浮かべるようになりました。
また「3割報告」の考え方も参考になりました。これは部下に作業を指示したときには、自分が求めていたことと、部下が理解したことがずれていないかを確認するために、作業が3割方進んだ段階で、報告を求めるというものです。3割段階であれば、もし方向性が間違っていても、大幅な修正を避けることができます。西野さんの話を伺って、研修後に3割報告を実務の中に取り入れたところ、より効率的に業務を進められるようになっています。
「部下を愛する」といったマネジメントについての根本的な考え方から、「3割報告」のような具体的なスキルまで、マネジャーとして大切な要素を学ぶことができました。
宮﨑様 成島は「部下を愛する」と「3割報告」が強く印象に残ったとのことですが、刺さるポイントは受講者ごとにそれぞれ異なっていたように感じます。これまで部下に対してティーチング中心で指導してきたマネジャーは、今回の研修でコーチングの重要性を認識できたと思います。また「マネジメントで大切なのは、メンバーの自立・自燃・自走を引き出すこと」という考え方に深く納得したという受講者もいました。
西野さんは研修中にマネジメントに関する大切な考え方や、3割報告などのちょっとしたティップスを数多く示してくださいました。そのすべてを吸収できなくても、受講者がそのうちでのいくらかでも持ち帰り、日々の業務に活かすことができているとするならば、研修は成功だったと思います。
会社のビジョン・ミッション・バリューに沿って判断ができるように
― 研修終了後、受講者の意識や姿勢には実際に変化は見られますか。
宮﨑様 会議などの場面で、会社の事業や業務について発言をするときの視座が一段上がったように感じます。一従業員としてではなく、チームを束ねるマネジャーの立場からの発言が増えてきました。会社が自身に求めている役割をしっかりと認識できるようになったということだと思います。
成島様 西野さんが、当社のビジョン・ミッション・バリューの浸透を図ることを意識した研修を実施してくださったこともあり、それぞれのマネジャーがビジョン・ミッション・バリューに基づいて判断や行動ができるようになったと感じています。例えば先日も部下指導のあり方をめぐって、マネジャー同士で話し合う場面があったのですが、「クロネスでは行動規範の中で『協力し合うことで成功を導き出す』ことを掲げている。だから部下指導においても……」というように、当社のビジョン・ミッション・バリューに基づいて議論ができるようになりました。「当社のマネジャーとしてのあるべき像」についての共通認識が醸成されつつあることを実感しています。
― 最後に、今後の研修計画について教えてください。
宮﨑様 マネジャー層を対象とした研修では、今後はコーチングやプレゼンテーション、ネゴシエーションなど、より具体的なスキルに特化した研修を実施したいと思います。その際にはマネジャーたちの自立を促すため、必要なものをマネジャー自身に選んでもらい、来年度以降の予算に組み込んでいきたいと考えています。また、全社員を対象とした基本的なコミュニケーションの仕方に関する研修の実施も検討しています。
成島様 既に各マネジャーから「自身の成長のためにこういう研修を受けたい、またチームでこういう研修をやっていきたい」という具体的な要望が上がってきています。予算と相談しながらになりますが、それらを来年度から順次展開していければと考えています。
― 本日はお忙しいところ、たくさんの有益なお話をしていただき、ありがとうございました。
※日本クロネス株式会社 ホームページ
※取材日時 2024年10月
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