「最近の若手社員はおとなしい」

ここ数年よく耳にする言葉の1つです。

その象徴的な場面が、新人や若手に対する研修。講師が「ここまでで何か質問はないですか?」と聞いても、誰も手を上げない。
ましてや、コメントや意見を言う人は皆無。じゃあ、本当に質問や意見がないかというと、実はそうではなく、後で個別に言って来たり、終わってからアンケート等で不満を書く。

企画サイドからすると、「先に言ってくれたら、対処のしようがあったのに・・」という気持ちになる。

まさに人材育成担当の方からすると典型的な「あるある」だと思います。

ここまでのことから類推すると、タイトルの「今の若者は積極的に発言しない」というのは、一見「Yes」、つまり本当のように思える
かもしれません。

しかしながら、です。

私の答えをズバリ言うと、No。「本当ではない」と思っています。

正確に云うと、「こちらのリード次第で積極的になってもらうことが可能」です。

若者が積極的になるための訴求ポイント

1つ例を挙げましょう。

当社のプログラムの中で、「発信力強化研修」というのがあり、その多くの対象者は新人や若手です。この研修もスタート時は他の研修同様、ほとんどの受講者は質問もなければコメントもありません。

ところが、この研修の後半ではほぼ全員が自ら手を挙げるようになります。

そのために研修内でいろいろな仕掛けを行っており、その根幹となるものを以下にご紹介したいと思います。

まずは、積極的に発言することの意味や重要性を「手を替え、品を替え」伝えます。その中で特に大事なのが、「周囲への貢献のために発言する必要がある」というメッセージです。

もっと言うと、「積極的に発信しないことが、実は周囲にどういう迷惑をかけているのか?」をしっかり分かってもらうこと。

今の若者は「周囲に貢献すること」にアンテナが鋭く立っています。逆に言うと、「周囲に迷惑をかけないたくない」という思いは非常に強い。

だからこそ、そこに訴求することがキモなのです。

受け手側が意識すべき姿勢

もう一つ大事な働きかけがあります。

そして、これがより重要です。

それは、積極的に発言した人に対してしっかり承認すること。

先ほど申し上げた「発信の意義を伝えること」は、あくまで理屈。正直に言うと、研修前半に説明する理屈だけで、即行動に移してくれる
人はごく一部です。なぜなら、理屈だけでは人はなかなか動かないものだから。

だからこそ行動で示し、実感させるのです。

つまり、発信していない人に対して「発信することがデフォルトであり、発信しないことはイレギュラーである」と体で感じさせる。そういった「行動を通じたメッセージ」こそが、彼らにおそらく一番刺さるのではないかと思っています。

この「発信への承認」を研修の中で繰り返していくと、自然と多くの人が感化され、最終的にはほぼ全員が手を挙げるということが起こるのです。

発信への承認は研修だけでなく現場でも活用できる

ここまで話してきたことは、別に研修に限ったことではありません。

「若手が会議などで発言してくれない」とマネジャーが嘆いているのは、よくあるシーンです。その場合も研修で我々が行っていることと同じことをすればいいのです。

まずは、積極的に発信することの周囲への影響、言わば「発信することの意味」を伝える。その上で、積極的に発言した人の姿勢を承認する。

ここで大事なポイントは、仮に発言のクオリティが低くても、「発信した姿勢そのもの」をしっかり褒めること。

実際にはその逆、つまり「若手の発信内容が今ひとつだったときに、マネジャーが発信そのものにネガティブな反応をしてしまっている」
ケースが多く見られます。そうすると、次からは若手は発信しなくなり、意見があまり出ない、不活性な会議になる。

実は「若手が会議で積極的に意見してくれない」という状況を作っているのはマネジャー自身なのです。

メンバーへの指摘、フィードバックにおいて大切なことは、「姿勢」と「中身」をしっかり分けること。仮に発信の中身が今一つだったとしても、発信する「姿勢」に関して、「これでもか」という位に褒めることです。

つまりは、リーダーの働きかけ一つで「積極的な若者を作っていく」ことは十分可能なのです。

ぜひ実践することで、チームそして組織の活性化、ひいては成果に繋げて頂ければと思います。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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