「仕事を遂行する際には、目的を明確に定めよう」
人生で何十回、何百回と聞いたことがあるセリフでしょう。それほど重要な証です。そして、それはプレゼンテーションにおいても同じです。
では、質問です。あなたはプレゼンを準備する際、どんな目的を設定してますか?
もし、
「××の事例を共有する」
「○○の状況を伝える」
のような表現になっていたとします。
ズバリ言いましょう。だから、プレゼンがうまく行かないのです。
なぜか?
設定したものは「手段」であり、それでは「目的」と呼べないからです。
そのレベルの表現のまま、例えば事例共有に関するプレゼンを行った場合、
「その事例を知ることが、自分にとって何のメリットがあるんだろう?」
「なぜにこんな細かい話を延々と聞かされているんだろう?」
といった心理状態に、聞き手を陥らせてしまいます。
それで良いプレゼンになるわけがありません。
プレゼンの質を上げる「魔法の質問」
ではどうすればいいのか?
シンプルで、かつ非常に効果的な方法があります。それが、「魔法の質問」です。
魔法の質問とは?
まず聞き手のうちの1人(Aさん)を決めてください。
その上で、自分に次の質問を投げかけます。
「自分のプレゼンを聞いた直後に、Aさんにどんな『心の声』を言わせたいか?」
これが「魔法の質問」です。
回答例は、以下のようなものです。
「これを導入すると、部門全体の生産性が向上しそう。自分にもメリットが大きそうだな」
「すぐに手を打たないとまずいな! 本音を言うと、自分に火の粉が降りかかるのは避けたい」
「このやり方は自分にも当てはまるぞ。すぐに試してみよう」
ここでのポイントは、Aさんに言わせたい「リアルな本音」を言葉にすることです。
なぜ「魔法の質問」が効果的なのか?
では、なぜこのやり方が効果的なのでしょうか?
1つめの理由は、これをやること自体、聞き手をありありとイメージすることに他ならないからです。
私の指導経験上、残念ながら非常に多くのプレゼンテーションが話し手の独りよがりになっています。その根本の原因は、準備段階にあります。話す内容にばかり意識が行ってしまい、聞き手のことをすっかり忘れて中身を考えてしまう。
だからこそ、この「心のイメージング」で自然と聞き手に思いを馳せることが可能になります。
2つめは、相手の感情に訴求するプレゼンになるから。
人は、正しいことを言われたからといって動くわけではありません。自分にとっての意味を実感し、「それいいな!」とか、「やらないと
マズイ!」というようにリアルに感情が動くと、行動化が促進されます。
それを起こすことに繋がる目的設定になるからです。
最後の理由は、自分のゴール達成に近づくからです。
プレゼンのゴールをひと言で言うと、「自分の狙い通りに、相手を動かす」ことと言えます。いくら聞き手に寄り添ったとしても、最終的にこちらサイドの目的が達成されないと意味がありません。
その点、このやり方であれば、聞き手の心を掴んだ上で、こちらが望む最終的なゴールへと相手をいざなっていくことが可能になり、成果に直結します。
こういった複数のメリットを同時に満たすための第一歩が、「聞き手にどんな『心の声』を言わせたいか?」という自分への質問なのです。
実際に使ってみよう
私の研修の中でも、受講者にこの「問い」を投げかけた上で、「聞き手の心の声のイメージング」をしてもらっています。驚くなかれ、これをするだけでプレゼンが見違えるように良くなります。
まさに、魔法の質問です。
もし試したことがなければ、ぜひ実践してみてください。成功率が格段に上がること間違いなしです。
それに加えて、部下や後輩を持っている人は、指導の際にこの「魔法の質問」を活用してください。指導・育成がグッと楽になるのみならず、組織全体のプレゼン力向上に繋がることでしょう。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。