昨年は、長期継続研修を提供する機会が増えた1年でした。

ここで言う「長期継続」というのは、例えば月一回のセッションを数か月に渡って受講してもらうような形のものです。当然ながら、「1回きりの研修」よりも学びがしっかり血肉に変わり、成果と成長に繋がりやすくなります。

ただし、指導させていただくなかで、受講者によって研修効果の定着度に差があるのも事実。

その違いはどこにあるのかを分析してみると、幾つかの理由が挙げられます。

中でも大きな要因が、「日々の習慣化ができているかどうか?」です。

やはり、研修期間中に大きく伸び、かつ成果にも繋げられている人は、学びを日々何らかの形で実践しています。とは言うものの、この「習慣化」は「言うは易し、行うは難し」の典型的なもの。新しい行動を忙しい日々の中で取り入れ、定着させるのは並大抵のことでは
ありません。

そこで、今回は習慣行動を続けるための3つの秘訣をお伝えしたいと思います。

モチベーションが湧かない時でも実行できるようにするには?

1つ目の秘訣は、ハードルを極限まで下げること。

私の指導経験上、「やる気はあるのに、習慣行動が続かない人」には、ある際立った特徴があります。

それは、欲張りすぎて、高すぎるハードルを設定してしまうというもの。

「大きな成長、飛躍のためにはこれ位のことをやらないと!」と背伸びした目標を設定したい気持ちは痛いほどわかります。確かに、目標設定後の2~3日は頑張ってノルマをクリアすることができるかもしれません。

ただし、人のモチベーションは必ず上下します。

4日後には、なぜだか急にやる気が出ない日が襲ってきます。そんなエネルギー不足の状態では、高いハードルを越えられず、頓挫する。さらに悪いことに、「出来なかった自分」に凹んでしまい、余計エネルギーが湧かず、結局リタイアしてしまう。

何とかこの悪いパターンから抜け出すために、ハードルを極限まで低く設定するのです。

ポイントは、全然物足りないくらいのレベルに定めること。

例えば、営業スキルを伸ばしたいなら、「営業スキル関連の読書を1日1ページだけ」というノルマにします。

「いやいや、そんな少ない行動量では知識も力も全く向上しないのでは?」と多くの人は思うでしょう。

ご心配なく。「エネルギーが余っている日は、ノルマ以上までやってしまっていい」というルールも同時に設定にします。

すると以下のことが起こるはずです。

エネルギーが十分な日は、気分が乗ってきて、何ページも読む。エネルギーが残ってない日は、本当に1ページしか読まない。

そうやって数十日間続いたら、誰だって途切れるのが悔しいから、とにかく続けようとする。といった具合に、習慣行動が継続していきます。

「続く習慣行動」と「続かない習慣行動」を分けるもの

2つ目の秘訣は、紐づけること。

新しい習慣を取り入れたい場合、何か(行為、場所、時間等)とセットにして行うというものです。

例えば、あなたが日々継続できている習慣行動を挙げてみてください。歯磨きはその典型例でしょう。

逆に、これまでに続けようと思って始めたけど、続かなかった習慣行動を思い出して下さい。読書、英語の勉強、ダイエット等、結構たくさん挙がるかもしれません。

では、ここで質問です。

「続いているもの」と「続かなかったもの」の違いは何でしょうか?

おそらく、大きな理由の1つは「何かに紐づいているかどうか?」だと思います。

朝の歯磨きは「食事の後(あるいは、起床後)」に完全に紐づいているから、忘れることなくほぼ無意識で続いている状態と言えます。

逆に先ほど挙げた「続かなかった習慣行動」は、歯磨きほど明確に「何か」に紐づいていなかったのではないでしょうか?

そうです。

何か新しい習慣行動を続けたかったら、必ず何かに紐づけること。それも、まずもって忘れようもないくらい明確な「行為」とセットにするのが肝要です。

アクションを可視化することの2つの効果

最後の秘訣が「アクション・レコーディング」というもの。文字通り、自分が行った習慣行動を記録にして残すことです。

例えば、プレゼン・トレーニングの場合。私がお勧めしているのが、プレゼンに関する何かのトレーニングや学習を記録するというものです。

例を挙げるなら、「上手い人のプレゼン動画分析を○○分行った」「強調の練習を××回行った」など。

では、なぜ記録するのが効果的なのでしょうか?

1つは、自分のアクション記録を目の当たりにすることで、達成感を実感できるから。おそらくこれ以上の説明は不要でしょう

もう1つの理由は、「前に進んでいる感覚」がモチベーション向上に大きく繋がるからです。

そのためには、エクセルやGoogleスプレッドシートのような「一覧で見られる」ものに記入するのがおすすめです。

記入した行為を定期的に眺めることで、「自分はここまで努力した」「結構頑張っているじゃないか」といった「着実に前進している」感覚を持ちやすくなります。

ハーバード大学のテレサ・アマビール教授の研究によると、人のやる気向上において一番大事なのが、この「前に進んでいる感覚」だそうです。この理論からも分かるように、「アクション・レコーディング」はモチベーションを高め、継続をさらに後押しするのです。

皆さんも、これらの3つの秘訣を自分に適用するだけでなく、ぜひ受講者にもアドバイスしてみて下さい。さらなる能力向上と研修効果の定着が進むはずです。

なお、今回の「習慣化のコツ」も含め、研修効果定着のためのノウハウを以下のページにまとめてあります。

ご興味のある方はご覧になってみてください。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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